忍たま長編1/勿忘草
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辺り一面、木の焼ける臭いと生臭い血の臭い、そして人間の焼ける臭いがした。
「任務完了、だな」
おれは隣にいる文次郎に呟いた。
「そうだな、」
おれたちの目の前には焼けている城が広がっている。足元に倒れているのはその城に雇われた忍者と兵士だ。
「無事に終わってよかった…」
「渚は技のキレが良くなった」
「ははっ、ありがとう」
おれは文次郎を見つめた。おれも文次郎も怪我こそしているが、そこまで大きな怪我はしていない。帰ったら保健室に行って伊作に治してもらおう。その前に風呂に入りたいな。綺麗に身体を洗ったら文次郎と接吻しよう。今回も無事に終えられてよかったと。二人で帰って来れてよかったと。久しぶりに共に床に入るのもいいな。
「文次郎、早く帰ろう」
「あぁ、最後まで気を抜くなよ」
「わかってるよ、さぁ、早く帰ろう」
おれは文次郎の背中を押して歩きはじめた。
ドンッ、と後ろから来た衝撃に突然力が抜け、文次郎にもたれ掛かった。
「あ、れ…?」
腹が熱い。
「ざまあ、みろ…」
太く聞き苦しい、男の声がした。
「っ…!渚!!クソっ…!!」
おれの後ろで肉が裂ける音がした。どうやらまだ生き残っている奴がいたらしい。最後まで気を抜くなと言われた途端、腹を刺されてしまった。おれはいつもそうだ。最後の一歩がいつも甘い。
「渚!おい!聞こえるか!!」
「……聞こえてる、って…」
なんだよ、文次郎。そんな顔するなよ。
「目、閉じんじゃねぇぞ!」
腹を触るとべったりと赤い血がついた。不思議と痛みは全くない。ただ、息が苦しい。
「おい!!一緒に帰るんだろう!!」
文次郎は血の気の引いた顔をしている。やっぱ、やばいのかな。もう、無理なのかな。
「かはっ…!」
文次郎に話したいことは山ほどあるのに言葉が思うように出てこない。
「無理に話すな!」
「もんじ、ろ、 だい、すき」
「馬鹿野郎…!!」
何やら文次郎が言っているが、声が遠くに聞こえる。そんな声じゃ聞こえねぇよ、
文次郎が何か叫んでいる。
おれの意識はそこでプチッと切れた。