海賊長編1/非日常

□甘くて愛しい
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「な!だからお願い!」

ただいまおれはナミとロビンにお願い中だ。今日は2月14日であっちの世界でいうバレンタイン。これはサンジとお付き合いしてるおれからすれば、あげなきゃでしょ!(ロビンが言うに、こっちの世界ではバレンタインなんて行事はないらしい。でもなんかの本には載ってたってさ!あれだね、おれの他にこっちに来た人が書いたんだろうね。)サニー号にはキッチンは一つしかないし、キッチンはサンジのテリトリーだからナミとロビンに足止めのお願いをしてるんだ

「ふふふ、いいわよ、ね?ナミ」

「いいわよ!」

「ありがとォ!!」

「後で何かくれるならね!」

「…そうですよね、わかってますあげます」

「よくわかってるじゃない!言っとくけど、チョコとかダメよ!」

残ったチョコをあげようと考えていたおれは最早苦笑いしか出てこない。

「はーい…」






おれは腕まくりをして気合い充分にキッチンに立った。

「レシピよし、気合いよし!」

板チョコは前に島で買っていたのがあったからそれを使おうと思う。

「おれ、料理すんの初めてだー」

わくわくした気持ちでロビンに貸してもらったレシピを覗く。

「…早くも挫折しそう」

まずどこに何があるかがわからない。

「鍋は…っと」

それから鍋とか箆(へら)とかアルミホイルとか探してやっと作業に取り掛かった。


のは、いいものの…

「失敗が許されない…!!板チョコ1枚で作るなんて…!!」

急にプレッシャーがハンパないし、しかも型って何!?そんなもんないんだけど!アルミホイルで作れますって無理でしょ!

「…ここは無難に丸とか四角とか?いや、でもバレンタインだし、付き合ってるし…でもおれがハートあげるのってキモくね…?」

でも付き合い初めて初めてのプレゼントだぞ?やっぱ、喜んで欲しいなァ

「…ハートつくろ、」

なるべく綺麗なハート型になるように頑張ったが、中々上手くいかず、不格好なハート型になってしまった。

「…まァ、上出来だよ、な…?」

レシピに視線を戻す。

@チョコレートを鍋で溶かします。

A型に流し込みます。

B冷蔵庫に入れて終了です。

「…えええええ!!手抜きレシピをもらってしまった…!!」

おれはロビンに1番簡単なレシピを貸して下さい!って言って、妙にニコニコしているロビンにこの本をもらって…

嵌められた…!!

「…ようは気持ちだよ気持ち」


あまりにも簡単すぎたチョコ作りは終了し、冷蔵庫に入れてサンジの元に向かった。





「サンジくん、みかんの手入れ終わったー?」

「はぁ〜いナミさ〜ん」

「じゃあ次はロビンの手伝いよろしくね!!」

「はぁ〜いただいまァ〜」

完璧にいいように使われているサンジの背中に飛び乗った

「サーンージッ!」

「うおっ!タクミ、どうかしたか?」

サンジは顔を少し後ろに向けておれのほうを見た。

「んーん、ちょっとサンジに会いたくなってさ!」

すると、サンジの手が伸びてきて、おれの頭をぐしゃぐしゃと掻き回した。

「…ったく…」

すりすりとサンジに擦り寄ると、サンジは「ん?」と声を漏らした。

「なんかタクミ、甘い匂いがするぞ…?なんか食ったか?」

「ええっ!食ってない、食ってない!!」

「…怪しいなおい」

「えええええっ」

え、もしかしてこの感じって…

「ロビンちゃん、ちょっと待っててくれな、」

やっぱりキッチンに行くのかァ!!

「ちょっ!ダメだってロビンの用事を優先しろよ!」

「キッチンの様子を見るだけだ。何も変化なかったら大丈夫だろ、それとも何か心当たりでもあんのか?」

「ないっす!!だから、ね?」

ぎゅっと力を入れて抱き着いた。お願いだから、まだキッチンに行くなよ…

するとサンジは立ち止まっておれの名前を優しく呼んだ。

「今だったら怒らねェから、言ってみな」

「言えねェ…」

「タクミ、」

いつも聞かないような心の底にじん、と広がる声を出されて、おれは俯いた。

「…おれが前までいた所の風習で、今日はバレンタインっていう日なんだ」

サンジがおれの手を握った。驚いてサンジを見ると表情も優しかった。

「続けて、」

秘密にしたかったんだけどなァ

「バレンタインってのは、あの、好きな人にチョコをあげるっていう行事で、普通は女の子が男に渡すんだけど、おれ、サンジと付き合ってるし、……サンジが、好き だから、キッチン借りて、チョコ作ったんだ…それでまだ固まってないから、だからっ」

そこまで言ったおれはサンジと繋いでいる手を思い切り引かれ、サンジにもたれ掛かる形になった。

「お前、それ、反則…」

「え…」

「悪ィ、おれを驚かすつもりだったんだろ?ナミさんとロビンちゃんに足止めまでしてもらって」

ぎゅっと力が込められ、よりサンジと近づいた。

「うん、」

おれもぎゅっと腕に力を込めた。

「…あー…クソ、」

急にサンジがおれを引き離した。

「え…」

「もうお前、ちょっと黙れ」

サンジが噛み付くような、甘いキスをおれに降らす。

「ふ… んっ、」

無意識に漏れる甘い吐息に、おれは顔を赤くした。

「クソ、かわいい…」

「サンジっ…!」

「ん?」

「もっと…」

サンジの黒いスーツの裾を少しだけ握ってそう言うと、サンジの表情が変わった。

「クソ…!」

さっきよりも熱いキスにタクミの口からは唾液が垂れ、さっきよりも甘い吐息と色気を存分に醸し出していた。


甘くて愛しい

君。



「型が無かったから、アルミホイルで作ったんだけど…不格好になっちまった」

「んなことねェよ、」

「でも愛は充分込めた!」

「…あァ、感じるぞ」

「(あーもうほんと大好きだ)」

「タクミ、」

「ん?」

「ありがとな、大好きだ」

「…っ!!おれも大好きだ!!」







バレンタインネタ

究極に甘くしたつもり




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