短編
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竹本とは今まであまり接点がなかった。クラスの奴らとは全員、一度は話したことがあるが、おれがいつもツルむのはわりと派手な奴らだ。竹本は大人しめで、気が弱そうなタイプだ。そういう奴らにも平等に接してきたが、あまり関わろうとは思わない。
おれがまとめてるのは学校にいる不良共と生徒会。生徒会が出す議案は全ておれが提案したものだし、新しく決まる校則も何もかもおれが考えたものだ。不良共は金髪のおれに絡んできたのを徹底的に蹴り倒しておれの下につくことになった。
まあ、どっちにしろ、おれの本性を言い触らそうなんて輩はいない。そんなことをしたらどうなるかわかってるからしない。そんなこと出来ない。
しかし迂闊(うかつ)だった。まさか廊下で聞かれていたなんて思わなかった。だから、いつもツルんでる奴らの中に竹本を引きずり込んだ。ビクビクと怯えているほうが監視しやすいはずだった。
…ところが、ここ数日で馴染んでしまったのだ。まあ、思っていたより、気が弱いわけではないらしい。ただ、いじめたくなる。なんだ、おれの中のSが駆り立てられるのだ。
「竹本、」
毎日、放課後も監視ためおれの側に置いておく。竹本は監視されている身なのにおれが話しかけると嬉しそうに微笑む。それがおれにはなぜだかわからなかった。
「サンジ、今日はどこ行くの?」
そんなことを繰り返していると、最近は監視するだけではつまらないので学校帰りにどこかに寄って行ったりするようになった。
二人のときには、猫を被っていなくてすむので楽だ。
「今日はCDショップに寄るぞ」
「何か欲しいのがあるの?」
「竹本に買わせようと思って」
「え!?そんなお金、持ってないよ…」
ニヤリと笑って言った言葉に、竹本は困ったように俯き、歩く速度を落とした。
「嘘だよ、お前に買わせるわけねェだろ」
「嘘!?…また引っ掛かったよ…」
「騙されやすいんだよ竹本は」
「…気をつける…」
…そう言っても、また次に引っ掛かってくれんだろ、
毎回毎回、同じように引っ掛かるのに、毎回反応が違う。
学習すりゃいいのに、なぜか毎回引っ掛かる。
おれの周りには今までいなかったタイプで、おもしろい。
…これだから辞められねェ。
おれはいつの間にか竹本にハマっちまっていたみたいだった。