短編

□お目覚めですか?
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※現パロ


少しずつ浮上しはじめた意識の外で、トントン、と規則正しく、心地好い音が聞こえる。寝返りをうつと、隣には既に気配がなく、残っているのは少しの温かさだけだった。遅れて香ばしい匂いが鼻をくすぐる。もう朝か、と思いつつもまた眠りに落ちようと体を縮めた。



「……ら、ほら、起きろ」

深く被っていた毛布を剥がされ、光が飛び込んできたことに、思わず顔をしかめた。言葉にならない唸り声をあげ、無駄な抵抗を繰り返す。

「朝メシ、冷めちまうぞ」

「ん゙ーー…」

「…ったく…」

呆れ気味に吐かれた言葉にうっすらと目を開けると、予想通りの呆れ顔をしたサンジがいた。

「おはよう」

「………はよ………」

まだまだ眠気は帰ってはくれないようで、おれに居座り続けている。

「眠そうだな」

「…だから、寝る…」

「こら寝んな、」

ぺしっと可愛らしい音を経てて額を軽く叩かれた。痛くも痒くも無いが、「いてっ」と言葉が零れた。

「んな馬鹿なこと言ってねェで、さっさと起きろ」

「…ん゙ーーおーきーたーいーー……」

頭上の枕を抱きしめ、ベッドの上をゆらゆらと左右に揺れる。

「あんまり寝れなかったか?」

誰かさんが昨日張り切ったせいでな!と心の中で悪態をつく。それを知ってか知らずか、サンジはおれの鼻を摘んだ。

「んがっ」

恨めしげに目を開けると、くつくつと笑うサンジが目に入る。ぶすっと唇を突き出して目を閉じ、また寝るふりをすると、唇に柔らかい感触と響くリップ音。バチッと目を見開くと、優しく微笑むサンジがいた。

「やっぱり姫は王子のキスで目覚めるんだな」

「…誰が姫だ!!」

「聞くか?」

「聞かん!」

ベッドの淵に余裕の笑みを浮かべて座るサンジを睨むように見つめた。

「………眠気が飛んでった」

「よかったじゃねェか」

「なんか気に食わん」

枕を抱きしめると、サンジは満足そうに笑った。


お目覚めですか?


「ほら、早く食卓につけ」

「んー」

サンジは寝癖だらけのおれの頭をぐしゃぐしゃと掻き混ぜると、ベッドから離れた。朝からさらさらと綺麗な金髪を眺めて幸せな気持ちが舞い込む。
そんな愛しいサンジの後ろを追い掛けるようにベッドから出ると、ふわふわとした気持ちが舞う中、食卓に着いた。

「どうした?そんな顔して」

「いーや!なんでもね!」


きっとこんな朝が、これからもずっと続いていく。そんなことを思える朝が、日常が、ずっとずっと続けばいい。そう思いながら、手を合わせた。



2013.7.14


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