短編
□仕方ない。
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※成長、学パロ
窓から見える澄み切った青空を見ながらおれはイライラとした気持ちを抑えるように深呼吸をした。
「ほんとに助かるよ」
「いいよー!全然大変じゃないしね!」
「いやぁ、タダってのがありがてぇよ」
深呼吸をしても隣にいるきり丸とその周りにいる取り巻きの女子たちの声は嫌でも聞こえる。今日、学校に来てからずっとこんな感じだ。いっそのことイヤホンでもしてやろうか、
「翔太見ろよ!こんなにもらったぞ!」
「へーよかったなおめでとう」
きり丸が孤児だということは昨日、皆に知れ渡った。きり丸から聞いた話だと、元々隠しているわけではなかったから聞かれたから話した、というのだ。
するとどうだ。こうやって何人もの女子がきり丸のためにわざわざ弁当を作ってきたというのだ。きり丸と恋人関係であるおれとしては全くおもしろくない。おれだけが知っていたきり丸の過去は皆も知っているものとなったうえ、女が作った弁当なんかもらってにこにこと嬉しそうに笑われて。
「思ってないだろ」
「当たり前」
当たり前じゃないか、誰が恋人に群がる女子をいいように思うだろうか、そのうえ、手作り弁当?ふざけんな
「あの、きり丸くん、これ、」
きり丸に文句を言おうと口を開いた瞬間、さっきとは違う女子がきり丸に話しかけた。するときり丸はにこにこと笑顔で「何?」となんて返答した。
…もうやってらんねぇ
おれは鞄の中からiPodを取り出し、後ろの席の奴に保健室に行ってくると伝え、教室から飛び出した。
イライラとしたおれが行く先はもちろん保健室などではなく、広々とした青空が眺められる屋上だ。
おれは屋上に着くとシャウト系の音楽を大音量でかけ、地面に寝転がった。この青空に向かって大声で叫んだら気持ちがスッキリするだろうか。ここから教室に聞こえるように叫んだらこのモヤモヤが吹き飛んでいくだろうか。
どちらも出来るはずのない非現実的なことであって、それらは更におれをイライラとさせる要因となってしまった。
「…きり丸の分からず屋」
きり丸がいくつも弁当をもらって嬉しいのはわかる。食費が浮くから嬉しいんだというのはわかる。わかっているから納得いくかというのは別の話である。
わかってる。これが嫉妬だということぐらい。わかってる。この気持ちがきり丸に理解できないことぐらいわかっている。だってほら、きり丸は追いかけて来ない。
「きり丸のバカあほクソおたんこなすデベソ」
おれはきり丸を小さな声で罵りながら両腕で顔を覆った。
「デベソじゃねぇだろ」
行き成り両耳から聞こえる音楽が消え、音楽の変わりにきり丸の声が聞こえた。
「…バカ遅ぇよ」
おれはきり丸から差し出された手を華麗に無視をしてそっぽを向いた。
するときり丸は小さくため息をつき、おれの隣に座った。遠くでチャイムがなっている。
「…なぁ、翔太の機嫌が悪いのって弁当のせい?」
しばらく続いた沈黙を裂くように、きり丸はぽそりと呟いた。
「…………まぁ、」
「やっぱそうかー…」
きり丸は今度は大きくため息をし、おれの顔を覗きこんだ。
「食費浮くから嬉しんだよ」
「わかってる、」
聞き分けが悪いのはわかってる。でも、それでも、やっぱり妬いちゃうんだ。
仕方ない、好きなんだ
「じゃあ、何で機嫌悪いんだ?」
キョトンとしているきり丸はやっぱりわかってはくれてないようだ。
「…弁当作ってほしいならおれが作るし。」
「え…?」
答えになっていない気がするが、まぁ関係ない。おれは驚いた顔をしているきり丸と目を合わせた。
「おれの作った弁当を食えよ、」
屋上には居心地の悪い沈黙が流れる。二人の間を通り抜ける風が冷たく感じる。きり丸はさっきから動かない。
「嫌…?」
少しずつ不安は膨らみ、そう言ったおれの声は掠れていた。
「い、やじゃない、嫌じゃない!すげぇ嬉しい…!」
微かに頬を赤く染めたきり丸がおれに満面の笑みを向けた。おれは嬉しくて、はにかみながら微笑んだ。
「でも、翔太は料理できんのか?」
「あー…そこはなんとかしてみせる」
「ははっ、明日が楽しみだ」
さてと、どんな弁当にしようか
島津さんへプレゼントです。遅くなったうえ、こんなお話で… 何度も書き直した挙げ句このお話になりました。今回のテーマは「嫉妬」にしました(=^ω^=)書き直しの希望がありましたら何なりとお申し出ください!どうか受け取ってください!
2000hitおめでとうございました!!