「野崎!真面目にしろ!」
厄介な体育教師に目を付けられた日向は授業が始まってからいろいろと言い掛かりを吹っかけられている。
「チッ…うっせェんだよ!」
日向は今まで全て無視していたが、ついに怒りは頂点に達したのか、肉食獣のような顔をしている。
「なんだと!!」
「なんでテメェの言うこと聞かなきゃいけねェんだよ!」
「教師の言うことだからだ!!」
「あ゙?喧嘩売ってんのかテメェ!」
あ、やべェ。
なんとなく直感で日向が先生を殴ることがわかったので、おれは大きく息を吸い込んだ。
「日向!!」
ピクッと動きかけた拳は止まり、おれを殴り掛かりそうな目で見てきた。
「おれと同じチームに入れ」
「はァ?なんでおれがテメェなんかと…」
「うるせェさっさとしろ」
半ば無理矢理同じバスケのチームに入れ、その場はなんとかなったが、チームの奴らはあまりいい顔をしていない。
「…こんな授業、やってらんねェー」
全員に聞こえよがしに言った日向は回れ右をした。
みんなびくびくとしているが、おれにはそんなこと関係ねェ。
バシリといい音を出して日向を叩いた。クラス全員の息を飲む音が聞こえた。
「いってェな!!!」
「うるせェ!黙って授業に参加しろ!!」
「……んだよクソ」
ぶつぶつと文句を言っているのはさっきと変わりないのだが、サボろうとはしていない様子だった。よかったと思う反面、おれは日向の変わりように戸惑っていた。見た目からすっかり変わったことはわかってはいたが、あんなにクラスをまとめるのが上手くて、みんなが自然と着いていくような奴だったのに。何があったんだ。半袖の体操服から見える腕は傷だらけだ。古傷から新しく出来たであろう血が滲んでいるような傷からたくさんある。
「んだよ、」
「いや別になんでもねェよ」
「チッ」
おれは日向に何があったのか、少し興味がわいた。