short**krk
□眼鏡の奥
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「なんや、なんでこんなとこおんねんな。」
「あら、胡散臭い関西弁のお兄さん、お久しぶりね。」
この前、バスケとは何の関係のないあたしが、この男を殴った。
他人の嫌がることをして、点をとる彼を許せなかった。
そんな試合は、試合とは言わないわ。
ただのいじめ、よ。
自分の力をそんなものに使うなんて人間腐ってるとしか思えないわね。
だけど、あたしは謝りにきたのよ?
だって分かっちゃったの、あなたが実はバスケを楽しんでて、それがあなたの個性で、あなたはあなたなりに相手に敬意を払っていることに。
「胡散臭いてなぁ。
んで?また殴りにでも来たん?」
「まさか。もうあんな思い、したくないもの。」
そう言うと、目の前の男は肩をすくめて笑った。
「悪い悪い、まさか殴られると思わんやろ?ついな、ついや。」
「にしたって、普通ひねりあげる?女の子の腕。」
「ぶっは、普通男を殴るか?」
あぁ、ほんとに素直じゃないな。
謝りにきたのに。
痛かった、って言って、でもあたしが悪かったって。
ちゃんと、いいに来たのに。
あの時から、少しだけ怖いのよ、男の人が。
あんな俊敏に、もう少しで骨が折れるかと思った。
今だってまだ痣が残ってる。
「で、なんのようなん?」
「…あ、の…」
「ん?」
前髪を触るのは、あたしが緊張したときの癖だ。
どうしてこんなに素直になれないの。
「…なぁ、それ、なに?」
気づいたときには遅かった。
手首の痣に気づいた彼は、すぐさまあたしの手首を掴む。
「ゃ、」
「あかん、逃げんな。」
怖いのよ。
あなたが。
「もしかしてこれ、わしの?」