short**krk

□飴玉
1ページ/1ページ




試合後に涙を流したのなんて、初めてだったんじゃない?


もう、しょうがないなぁ。





「彼、強かったね。」


声をかけても見向きもしない。


タオルを頭にかぶせたまま、俯いている。




「こら、こっち向いてよ。あーつーしー。」


そういって、わたしは震える背中に手を置いた。





ゾーンに入ったってことはそういうことだ。


本当は好きなんでしょ?ばすけ。


負けるのはもっと嫌い、だなんて。




いい加減、気づくのが遅すぎよ。






「…うるっさいなぁ、もう。
どっか行っててよ、まじうざい。」



素直じゃないんだから。 


顔、隠しすぎだよ、ばか。




「これ。あげるからさ。」



彼に見せたのは、いちごの飴玉。

確かこれが一番好きだったはず。



「じゃあね。」


どっか行ってろなんて言われるなら仕方がない。

従ってやろう。




「……、」



無言のデカ物を無視してくるっと後ろを向く。

大きいのは体だけ?





「あ、…がと。」




背中に向けられた言葉と声には、気づかないフリをしてあげよう。








飴玉。


(いちごの飴に籠めた想いは、彼に届いたのだろうか。)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ