short**krk

□灰色の彼
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黄瀬くんと灰崎くんはどうやら仲が悪いらしい。


バスケのことは何にも分からないわたしだけれど、それでも何度か黄瀬くんに呼ばれて試合を見に行った。



そのたびに灰崎くんと衝突しては衝突して。

ついにはバスケ部を強制脱退させられるはめになった灰崎くん。




なるほど、これはなかなかにデンジャラスボーイだ。



「お前、あいつの女だろ?」

あいつ、というのは黄瀬くんのことで。


はい、そうです。

って言うのは冗談で、彼とわたしはただの幼なじみだ。


彼女になったつもりなんて更々ないし、第一わたしが好きなのはもっとこう、激しさがある男だ。



あんなプレイボーイはお呼びではない。



「なぁ、なんとか言えよ。」


壁に押さえつけられて、灰崎くんの首筋と鎖骨が間近に見える。


なにこれ萌える。



ぎりっと手首を捕まれて、その痛みがわたしを妄想の世界から呼び戻した。


いたい。



「っ、違いますけど、?」


そう言うと灰崎くんは目を細めて。


「まーどっちでもいいわ。
あいつとは宜しくやってるみてぇだし?」


「あー、…そうですね。てゆか痛い。」


「痛くしてんだよバーカ。」


「うわ、性格悪。」


「殴られねーだけ良いだろ。」


睨みつけると灰崎くんは、とてつもなく悪人面で、わたしにこう言った。


「お前に手出したら、あいつどんな顔すっかね。」


「は?」


呆れ顔のわたしを放って、この男はわたしのブラウスを引きちぎった。

あとで弁償しろよ。



「ちょ、何考えてんの。」


「おいおいー、萎えるぜほんと。もっと叫ぶかなんかしろよ。」


「…いい加減にして。」


なんだこの男は。


「俺ァただきっかけが欲しいのよ。あいつが俺を殴る、っつーな。」


じゃなきゃ喧嘩もできねーだろ?



そのきっかけがわたし?

ふざけんなよ。



そうしてる間にも彼の手は止まらない。

さっさとわたしの胸を覆う布をとりさって、乱暴に掴む。



「い、たっ、」


「うーわ、でっか。」


思わず涙がでる。

痛いのは嫌いだ。


「……。ちっ、まだ来ねーのかよ。」


わけの分からないことを言う灰崎くんの手は、ゆるまない。



だけど、ちょっとだけ胸を掴む彼の手が、優しくなった。

ような気がする。



バンっという音とともに部屋に入ってきたのは黄瀬くんで。

わたしと灰崎くんをみたとたん、顔色を変えた。


「あんたはっ、どんだけ俺にちょっかい出したら気ぃ済むんスか!」


「やーっと来たか、遅ぇんだよ。」




灰崎くんはそう言って、

…わたしの頭をちょっとだけ撫でていった。


ぽんぽんっと、そう、優しく。


喧嘩に邪魔だと脱ぎ捨てた制服はわたしの上に。


意味、わからない。




最後に優しくしないでよ。

投げられた制服をぎゅっと握った。




灰色の彼。


(泣くまで乱暴して、悪ぃな。)

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