short**krk
□口癖の悪い男
1ページ/2ページ
誰もいない部活後の体育館に響く。
「うっせぇこら!轢くぞ!締めんぞ!」
「はっ、ああああ?!なんであたしがそんなことまで言われなきゃなんないのよ!」
「元はと言えばてめーがドリンク剤入れ間違えたのが悪ぃんだろーが!」
「だからってそれ以上のこと言う?!だいったい、もっと個人見ろとかレギュラーでもないあんたに言われたくないんですけど!」
「っ、」
宮地清志、この男が努力家なのは知っている。
たぶん、いや絶対、彼は次のレギュラー決めのときに選ばれるだろう。
だけどマネージャーをまるで雑用とでも思っているその態度にむかついて。
一番触れてほしくないであろう話に持ち込んだ。
それは彼の地雷だった。
「なに?言い返せないでしょ。」
ちがう、こんなこと言いたくない。
「人のこと言う前にもっと自分の努力したら?」
ちがうちがう、彼はすごく努力してるの。
あたしがそれを一番知っているのに。
「っせぇよ、殺すぞ。」
いつもより声に力がなくて。
本当に見た目だけは不良じみていて、人を一人殺してそうなその目は、今は別人のように濁っていた。
こんな顔をさせたいわけじゃないのに。
「ちっ、お前もう帰れよ。」
外を見て宮地が言った。
もう暗い。
「言われなくても。」
あたし、本当にかわいくない。
荷物をまとめて外にでる。
きっとこれから練習するんだろうなぁ、宮地。
あたしの一言がどれだけあいつの胸にささったんだろう。
「…やっぱり言い過ぎた。謝る。」
無意識にそう呟いて、体育館へ戻った。
ダムダム、と規則的な音をたてているあたり、ほんとうに一人で練習している。
バレないようにそっと、ずっと、宮地を見ていた。