short**krk

□犬の扱い
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「ねえ、ちょっとそこの駄犬。どいてくんない?」


食堂という学生の謂わばたまり場で、イケメンオーラ抜群(実際イケメンなのだが)のあの金髪野郎がいたら、女子は群がる群がる。


わたしも女子の端くれだと思い続けているが、どうもあんなきゃーきゃーぎゃーぎゃー言う集団に混ざろうとは思わない。


とりあえずどいてくれれば良い。
パンを買うのに邪魔だ。



「ちょ!え!駄犬ってなんなんスか?!ゆめのっち!」

「ゆめのって呼ばないで!」

「ひどいっスよ!」


ぐたぐたと中1の頃からの縁だから、お互いまぁ友達関係ではあるわけで。



さっきから女子の目が痛いんですけど。



「じゃーね。」

「あ!ゆめのっちーー!」


お望みの調理パンを買って教室にもどる。


さてさてこのあとの授業の予習でもしますか。










「おーい、林、これ教務まで頼むわー。」

「げ。」


雑用係であるわたしは放課後にプリントをしかるべきところに届けるのも仕事なのだ。

めんどくさい。

てか教務って一番遠いし。


だるい…!!




「…はーい。」

とりあえず返事をする。

うーわー、重そう。てか重い。

量はんぱねー。


なんでこういうのを女子に頼むわけ?!

もうひとりいたじゃん!
…!!アホ峰だ!

あいつさっさと部活行きやがったな。




「だるーいー。」

持ったもののこっから教務か、と気が重たくなりながら仕方ないので歩き出す。

この角をまがって…



「うわ?!」

「へ?」


ドサッ



「……。」

「……。」


「…ちょっと。」

「いや、ごめん、いやけど。」

「駄犬。」

「うっ、」


なんでよりによって駄犬とぶつかったわたし。

体格差があるわけだから、わたしが倒れ込んでもっていたプリント類は散らばって。

駄犬はかがんでわたしを見てるし。


「大丈夫っスか?」

「プリントが大丈夫じゃない。
拾うの手伝ってよ。」

「おっけ。」


何がおっけじゃ!もう!



拾い終わってわたしは再びそれを持って歩こうとする。

駄犬はこれから部活みたいだし。

肩には大きなバッグがかかってる。



「これ全部ゆめのっちが運ぶんスか?」

「うん。」

「もう一人のやつは?」

「あんたの部活の青いやつだよぼけ。」

「青峰っち…バスケしか見てないっすからねえ…。」

「ま、行くわ。」

「ちょちょちょ、持つっスよそれ!」



はあ?あんた部活でしょなにいってんの?


「駄犬にはむりむ…」

「よっ、と。」

「!!」


この駄犬!
わたしが両手で持ってたやつを片手で…!
しかもそのバッグ持ちで…!


「駄犬でも男っスよ?」

しかも驚くわたしを見て鼻で笑いやがった!

「…笑わないでよ、駄犬のくせに。」

「笑ってないっスよー、ゆめのっち可愛いなと思って。」


…これだからイケメンは困る。




「ありがと、黄瀬。」

「はいはいー。」




犬の扱い。
(中身もイケメンとか困る。)

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