short**magi
□誰がなんと言おうと、わたしだけはあなたを愛していた。
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「お前は本当に可愛いな、メリー。」
その名前も、この居場所も、すべてこの人から頂いた。
「本当に可愛い奴隷だ。」
あなたは、従順に従えば従うほどそうやってわたしを愛した。
いいや、可愛がった。
愛しただなんてただの独りよがりだ。
愛していたのは、わたし。
「メリー、俺はいまとても腹が立っている。こっちへ来い。」
あなたを待っていると時たまこういう日もあった。
それがどんな意味なのかも理解していた。
殴られる痛みはもうすでに慣れてしまっていて、体中この人から受けた痣だらけだ。
でもいいの。
これはあなたが近くにいる証だから。
わたしは知っていた。
人を殴って、己は強いのだと誇示して安堵する瞳の中に、苦しみの色が混じっていることに。
わたしは知っていた。
あなたは寂しいから、わたしたち奴隷をそばに置いていることに。
「お前は本当に可愛いな、メリー。」
迷宮から還ってこないあなたを、わたしはいつまで待てばいいのだろうか。
きっとまた腹をたてているのだろう。
痣はもう消えていた。
誰がなんと言おうと、わたしだけはあなたを愛していた。
(ジャミル、さま。)