short**magi
□何もかも捕らわれて。
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かの有名なシンドバッド王を暗殺せよとの命令が出た時点で、わたしはこの汚い飼い主に捨てられたのだと悟った。
世の汚い大人のすべてを表すような、わたしの飼い主。
暗殺業は小さいころから教え込まれ、数々の人を殺したし、そのたびに命の危険にさらされた。
あの男は、のうのうと、わたしを捨てたのだ。
それもわたしの力が怖くなって。
いずれ自分の脅威になるかもしれないというただの憶測で。
ならばそのとおりにしてやろうではないか。
殺して、さしあげようではないか。
汚い人間から吹き出る血も、所詮汚い。
赤いそれを見ながら、もう居場所はないのだと思い知った。
ならば最期に。
その、シンドバッド王を目に入れておこう。
殺す気なんてさらさらない、どころか、むしろ殺される気のがある。
なんと言ったか。
昔わたしと同じように彼を暗殺しにいって、まんまと彼に捕まった男がいたはずだ。
…ジャーファル?
確かそんな名前だ。
まぁそんなことはどうでもいい。
わたしに、もう居場所なんてないのだから。