short**magi
□鎖
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あなたの気まぐれに
わたしがどれほどの感謝をしているかなんて、
きっとあなたは気づいてない
「よお、エミリア。
今日も相手してくれよ。」
エミリアという名は主人につけられた。
わたしの主人はそれはそれは有名な残虐な領主さまで、男たちは少しでも領主の気が晴れるよう、女の奴隷を買っては献上し、捨てられたものは殺されていった。
わたしは奴隷だった。
いつからか分からない。
ちいさいときからこのくだらない領主サマの言いなりだ。
別にそれで良かったのだ。
汚れた身には、いまさら綺麗な世界など必要ないから。
「はあい。主さま。」
少なくとも、今晩はお腹をすかせないで済む。殺しもしないで済む。主の背中に爪をたてないよう、それでも快感を得ているのだと感じられるよう、"演技"さえすれば。
今晩は困らない。
「相変わらずおまえはかわいいよ。
最高の奴隷だ。」
痛くたって飢えで死ぬよりははるかにましだ。
心はもう死んでいるのかもしれない。
「ほら、もっとこっちに来いよ。」
ジャラ…
鎖の音と、主の汚い息の音を聞きながら、わたしはいつもこの状況を客観視している。
そうよ。別につらくなんかないわ。
惨めでもない。
わたしは生きている。
別に。
別に。