long**ガンダムSEED

□1.捕まる
1ページ/1ページ

「……驚いたな。」

捕獲した機体を整備班に渡し、部屋でパイロットの顔を思い浮かべながら待っていた。

あれは因縁の機体だ。仲間が何人もやられた。
条約を破ったのはナチュラルの方ではないか。
パイロットはどんな奴か、どのような訓練を受けてきたのか。

「捕まえたら、いたぶって情報吐かせて、殺してやろうぜ。」

いつからかそんな声が艦内から聞こえてくるようになった。俺だってそのつもりだ。



それが、まさかな。



「ん…う…っ」
肩の傷が痛むのか、まだ意識がないそいつが唸る。俺がつけた傷だ。

「おい…女じゃねえか…?」
「ああ…本当にあれが地中軍のパイロットかよ…」
「どうする?隊長に知らせるか?」
「…まあ待てよ。」


動揺する隊員の1人が、呟いた。



「どうせ幹部のもんになるんなら、ここで俺らが味見しちまってもいいよな…?」




その瞬間、これまで兵士だった男たちの目が揺れる。
艦隊は男所帯だ。女がやってきたら誰だってそう考える。

まして、敵の、ナチュラルの。

男の1人がそいつに近づき、服に手をかけた。
「へへ…いい体じゃねえかよ…」
……俺の部下ながら、下衆な顔しやがる。

「う…」

女がまた声を洩らした。
ゆっくりと目が開かれていく。徐々に自分の置かれている状況を把握していったようだった。

「おい!目覚ましたぞ!」

焦ったときにはもう遅い。女はすばやく服に手をかけていた男の腕を握り、

…あろうことか投げ飛ばした。
なるほど、生身でもなかなかの腕前らしい。

「うわっ?!」

投げられた男を見て、まわりの隊員が武器を持つ。小型のナイフだ。

「…ザフト軍は下衆な野郎が多いのね。コーディネーターだからかしら?」

女の発した言葉に、男たちは怒りを覚える。

面白い女だ。この状況で喧嘩を売るか。
素直に可愛くしとけばいいものを。


「このアマ!」
「俺たちの仲間も…俺の両親もお前らナチュラルにやられたんだ…!」

「知らないわよ。それが戦争でしょ。」

「なんだと?!条約を破って、核を使う一方的な攻撃が、戦争だっていうのかよ!」

血のバレンタイン。24万以上の同胞が命を落としたあの日。

「核を保有するザフトが言うことじゃないわね。」
女はナイフを避けながら、的確に相手の急所をつく。

「っクソが!」

「いっ!た!」

だが所詮はナチュラル。どんなに鍛えていたって、体力がそもそも違うのだ。

腹を殴られた女は、苦痛の表情を浮かべながら男たちを睨む。

「謝れよ!」
「そうだ!死んだ仲間に詫びろ!」

「…馬鹿ね…死んだ人間に何をしても無駄なのに…」

額に汗をにじませ、女は言う。その目は心なしか揺れているように感じる。

出血が多いのだろう。女はその場に倒れ込み、再び意識を手放した。



捕まる。
(そして私は、あの人の夢を見る)
次の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ