long**ガンダムSEED

□4.憎み合う
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医者が部屋を出ていって、しばらく経った。
捕虜をこうして一人にさせておくなんて、信じられない。


「何のために戦う…か…。」


私はブルーコスモスじゃない。
彼らのような殺戮は望んでいないのだ。




本当にそう言えるだろうか。


「コーディネーター…。」
私たちとは、違う存在。
遺伝子を操作され、私たちよりも遥かに能力を持つ存在。

私から、大切な人を奪った存在。


私は、復讐がしたいのだろうか?












突然、近づいてくる足音に、意識を集中させる。

いけない。ここは敵陣なのだ。考え事など、あんな医者が言ったことなど、無視しなくては。



足音は、部屋の前で止まる。
ドアが開いた瞬間、その男は私を見て笑った。



「hello、お嬢さん?」

鋭い目と、引き締まった体から、軍服を着ていなくても軍人であることが分かる。

色黒で、金色の髪。
これも遺伝子操作の結果なのだろうか。


「おいおい。挨拶したのに返事もなしかよ。」

人の面、じろじろ見てさあ。

男は、そう言ってへらへらと私に近づく。



「…あなたは?」

「ディアッカ・エルスマン。ザフトのパイロット。」

「私に…何の用?」

警戒しながら聞くと、男はまた笑う。


「女の捕虜って聞いてさあ。ナチュラルの女と話す機会なんてねえもん。」

手が使えない私は、立ち上がって男と対峙する。

「いやいや。抵抗とか無意味だから、やめた方がいいんじゃない?」


この手の紐を何とかしないと。

「なあ。お前、なんで軍人なんかやってんの?」

男がじりじりと近づく。
切れるものがあれば…いざとなったら蹴り飛ばしてやる。


「聞いてんだけど。」

「?!」





目の前に男の顔。その後ろには天井。
最悪だ。どうやらベッドに押し倒されたらしい。


「お前、遅いもん。」
へらへらしている癖に、男の手は確実に私の腕を捕まえていて。そのまま固定されてしまった。


「…コーディネーターを殺すためよ。」

無闇に抵抗するのは得策ではないことを悟った私は、とりあえず質問に答えることにする。


「はは。馬鹿じゃねぇの。」

何がそんなに可笑しいのか。

「ナチュラル風情が、調子に乗るなよ。」

男の顔から笑顔が消える。
途端、私の軍服のボタンが飛ぶのが見えた。









憎み合う。
(こんな男に犯されるくらいなら、舌を噛んで死んでやる。)
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