short**magi
□鎖
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「マギを殺せ。あんなものは迷信に過ぎぬ。殺せ。」
領主が兵士たちにその命令を出したのは、突然のことだった。
マギとは王の選定者であり、大いなる力をもって人々を導く存在らしい。
わたしには関係のないことだ。
そうだな。
もし大いなる力を持っているというのなら、このくだらない国と世界を…。
「…ふ、ふふ。くだらない。」
くだらないわ。
そんなものに今更すがる気はない。
「エミリア。おまえも兵たちと共にマギのもとへ行くのだ。」
「え…?」
「長旅だと士気が下がるからな。
…分かるよなあ?」
わたしは奴隷だ。
兵たちの、慰めものに。
そうか、わたしは人ではなく、モノなのだ。わたしが何を思おうと誰も気づかない、気にしない。
「…分かりました。主さま。」
兵たちのわたしへの扱いはこれといってひどいことはなかった。
ただ人数が増えただけ。
痛みに関しては領主サマの方が上かもしれないな、はは。
「…みんな死ねばいいのに…。」
身体中のアザと、べたべたした肌。
生理的な涙で汚れた顔。
握られた痕、痛む腰。
「気持ち悪い…。」