Long Story【主従恋愛】
□言葉を頂戴
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私は奥州筆頭 伊達政宗の妹。
身分柄、子どもの頃から好き放題させてもらったお陰で、我慢知らずの我儘姫に育った。
でもそれを自覚しているんですもの。
偉いと思いなさいな。
それでも、ある1人の男の前では素直になれず、いつも怒らせ 怒られて…
ぇ?それは誰かって?
兄上の右目、片倉小十郎よ。
【言葉を頂戴】
「姫!部屋にお戻り下さい!」
『いやよ』
朝早くから続く勉学に飽き、私は小十郎の目を盗んで部屋から飛び出した。
だってもうすぐ昼よ?
やってられないわ。
「貴方様の為に作られた課題ですぞ!?」
『別に誰も頼んでないわ』
「我儘を仰らないで下さい!」
『私の我儘なんて、今に始まったことじゃないでしょ?』
城の廊下で小十郎と追い掛けっこしながら会話をする。悪態を付きながらも、実はこの行動は私にとって、楽しくて嬉しくて仕方がない。部屋で勉強している時は構ってくれてる訳ではないもの…
そんなことを思いながら進んで行くと、目先に従兄弟である成実の姿が見えた。
『成実助けて!』
「わッ」
私は成実に抱き付いた後、直ぐに彼の後ろに隠れた。小十郎はというと、私と成実の目の前に立ちはだかっていた。
「お前等、何やってんだよ?」
『こじゅが私を追い掛け回すのよ』
「貴方様が勉強から逃げるからです」
『だってつまらないんだもの』
「お前、やることはやれよ…」
はぁと溜め息を吐きながら言う成実が癪に障った私は、逆に甘えてやった。
『成実までそんなこと言わないで?部屋に籠りきりで、寂しかったんだもの』
上目遣いでそう言ってやれば、たじろぐ成実。内心クスクス笑う私だったが、小十郎には逆効果だった様で…
「姫、いい加減になされよ!
成実なんかに色目を遣われて!」
「なんかって酷くね!?」
「構って欲しければそう言いなさい!幾らでも御相手するものを…
…成実も、鼻の下伸ばしてんじゃねェ」
「とばっちりだ!」
ギャァギャァと騒ぐ2人だが、私は小十郎の言葉に驚いて固まってしまった。
だって、ぇ?
構って欲しければそう言っていいの?
相手、してくれるの…?
しかも成実相手にあの言葉…
嫉妬、してくれてるの?
あんな言葉を小十郎が口走るなんて…
結構焦ってる?
『…小十郎』
「なんですか!?」
『好きよ』
「私だって好きですよ!………はい?」
『大好き』
私の告白に、今度は小十郎がたじろぐ。
成実の後ろから前へ出て小十郎の目の前に立ち、じっと彼を見詰めれば、思い切り抱き締められた。
「姫…、俺は…っ」
『もう一度言うわ。好きよ』
「勿体無き御言葉…っ」
『そんな言葉が聞きたいんじゃないわ。ねぇ、小十郎は?貴方の言葉を頂戴』
「…愛しています。いや、愛してる」
『…それでいいのよ』
私も小十郎の背中に腕を回し、ギュ…と抱き付いた。
後ろで
「ぇ?俺ってなに…?」
と、成実が呟いていることなんて放って…
END.