□振り返る
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この海、めちゃくちゃ懐かしいでしょ?

中2の夏にも一緒に来たね。

まああの時は遠足みたいな感じだったから、みんな一緒だったけど...

俺さ、あの時から名無しさんのこと好きだったんだよ。

気付いてた?

名無しさんのことだから絶対気付いてないよね。

それから1年経って...

まさか名無しさんの方から告白してくるとは、さすがの俺も考えてなかった。

あの時は...ありがとう。

あの時の名無しさんの真っ赤な顔忘れないよ。

馬鹿にしてるんじゃないって!

可愛かったなあってことだよ。



...最後に一緒に来たの、いつだっけ?

ああ、高1の夏の夜、だね。

あの時はちゃんと二人きりだったね。

いつもなんだかんだで邪魔者がいたりしてたから、念願の!って感じだったね。

あの時の星は...今でも瞼の裏に焼き付いてるよ。

本当に綺麗だった。

星も勿論綺麗だったんだけどさ、俺が星よりも釘付けだったのは...

星を見てる名無しさんの横顔だよ。

恥ずかしいって?

あはは、やっぱ照れてる名無しさんは可愛いなあ。



あ、そうだ。

その年のクリスマスのこと、覚えてる?

さすがにこれは、俺も恥ずかしい。

初めてが名無しさんでよかったよ、本当。

繋がった瞬間さ、思ったんだよ。

俺、これから今以上に忙しくなって、一緒にいられる時間も短くなるけど、
だからこそ名無しさんと居られる時間をもっと大事にして、
絶対絶対、一生名無しさんと居ようって。

その気持ちは今も変わってないよ。



「ねえ?名無しさん。」



振り返ってばかりで、きりがないね。

振り返っても、振り返っても。



あの日、練習なんか休んで名無しさんと一緒に帰ってたら。

あの日、スケート靴なんか脱ぎ捨てて、一番に名無しさんのところへ向かってたら。

きっと、名無しさんは今も俺の傍で笑ってたね。

「ほんと、懐かしいね。」

「これからもたくさん、いっぱいいっぱい思い出作ろうね!」

なんて言って。



振り返ってばかりで、きりがないね。

振り返っても、振り返っても。



そうだ。

何度後ろを振り返ったって、もう名無しさんはいないんだ。

もう、どこにもいないんだよ。










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