□拗ねる
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オリンピックのエキシビション。

今回のは、同じ順位の男女で組むっていう演出がある。

別に嫌なわけじゃないし、むしろ楽しそうだと思う。

何が不安って決まってる。

終わった後の名無しさんの機嫌のことだ。

きっとそんなことしたら、名無しさんは拗ねて拗ねて、拗ねまくり。

でもやらない訳にはいかないので、やるしかない。



―――



エキシビションも無事終了。

一段落したところで、拗ねてるであろう可愛い可愛い彼女に電話をかける。

受話器を耳に当てると、1コールも鳴らないうちに名無しさんも受話器を取った。

いつもの元気な声は無く、それどころか、何も喋ろうとしない。

ほんの少しの名無しさんの吐息と、シーツが擦れる音だけが聞こえる。



「...拗ねてる?」

「...拗ねてないし。」

「うーそー。」

「うーそーじゃないっ。」

「嘘ついていいの?」

「ついてないもーんだ...」



ありゃりゃ。

案の定拗ねてます名無しさんちゃん。

ここまで頑固なのは、今までで一番かも。



「名無しさんー。」

「なーにー。」

「好き。」

「...ばか。」

「そんなこと言っていいんだー?へー。」

「ぬ...なんでよー。」

「名無しさんは俺のこと好きじゃないってことにしちゃうよ?」

「え、あ、そ、それは...」

なんだこいつ可愛すぎる。

名無しさんには、絶対冗談なんて通じない。

だからこそ、もっと虐めたくなるじゃんか。



「妬いたの?」

「ううー...」

「本当のこと言ったら、後で抱き締めたげる。」

「ぬ...ほんとに?」

「俺は約束は破んないよ。」

俺が言うと、少し間があってから、

「...妬いたの...あたしの結弦なのに...」

と、やっと白状した名無しさんちゃん。

「よく言えました。」

全く...一回拗ねると、本当にご機嫌取りが大変。

その役割を担えてる俺は、多分世界一幸せなんだけど。



とりあえず、拗ねた名無しさんは超絶可愛いので、次会ったときはめちゃくちゃになるまで、抱き締めてキスしようと思う。












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