めいん!

□知り合いの家の居候君
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夢主と知り合いの年齢は未定。エレンよりは年上。
[進撃の巨人]がマンガとして存在する世界です。
エレンの年齢を諸事情で変更しました。
エレンの心はズタボロです。
ちなみにこの話の進撃の世界は比較的平和です。




震え出したガラケーを開く。
別に仲良くない知り合いからのメールだ。

[久しぶり!私だよ?覚えてるよね?
私、今日帰るの遅くてさ!でもお洗濯物干しっぱなしなの!
良ければしまっておいてくれるかな?
あとあと、外国人!の居候がいるんだけど、
その人にご飯作っておいて!よろしくぅ!
合鍵はポストに入れて置いたから!
××××って入力すれば開くよ!]

「あー・・・だる」

茜に染まる空を窓からしばらく眺めて、私は立ち上がる。
面倒だけど、断ったらもっと面倒になる気がする。



***


言われた通りに合鍵を手にして知り合いの家に入る。
少しごちゃごちゃした部屋をまっすぐ進むと、リビングにたどり着く。
相変わらずかわいくない人形だらけだ。

ふと、部屋の端に動くモノが見えた。ソレは体育座りで、プルプル震えてる。
黒茶のような髪の毛、綺麗な翡翠の目。彼が例の居候のようだ。
翡翠の目に涙をためて、怯えた表情でこちらをうかがう様はそう、チワワだ。
恐怖に怯え、自分の居場所を奪われたチワワだ。
むしろチワワ以外に見えない。彼はチワワだ。

3秒ほど彼と見つめ合っていると、彼は顔を反らす。
まるで僕は負けた、ごめんなさい許して、というように。チワワだ・・・!
犬好きの私としては撫でて愛でてあわよくば仲良くなりたいが、
知り合いの洋服をしまわないといけない。

早足でベランダに行き、投げ捨てる勢いで服をしまう。
彼はその音にもびっくりしたように体を震わせる。

「はじめまして!」

勢いよく振り返り、叫ぶ勢いで挨拶をする。
よけい怯えさせてしまったかもしれない。

「ひっ・・・はじめ、まして・・・」

思ったよりチワワ君の声は高く、青年よりも少年のほうがしっくりくる。
ゆっくりと近づいて、チワワ君の前でしゃがむ。

「私は名無しさん。10代後半。チワ・・・少年は?」

「あ・・・俺は、エレン。13歳、です」

「エレン君か、よろしくね」

手を差し出せば、おずおずと握手をしてくれた。
13にしては硬い手のひらだ。
剣道とかしてるのかもしれない。少年らしくて良いことだね。

先ほどまで握手していた手でチワワ君の頬に触れて、
滑らせるようにして頭の上まで移動させる。そのままの勢いでなでなで。
臆病だったり、人に慣れてない犬には顎から滑らせるようにするといいから。

きょとんとした目でチワワ君はこちらを見ている。
髪質は思ったよりさらさらしていた。
チワワ君の顔は整ってるから、案外女装したら似合うタイプだと思う。

「あ、の・・・」

「ごめんなさいね、もう少し撫でていい?」

「あ、はい」

チワワ君は少し俯いて目を閉じた。あれだ。撫でられた犬そのままだ。
2分ほどしたら私が満足したので、彼も退屈だろうと手を離す。
思ったより充実した時間だった。
知り合いにご飯とか面倒だったけれど、このチワワ君にご飯を作るのはいいかもしれない。



***
(視点:エレン)


この世界に来て2ヶ月が過ぎようとしていた。
ようやく俺はこちらの世界に慣れた、と思う。
最悪だ。別の世界に飛んだなんて、信じ難いのに。
家主である女は俺の事を知っていて。

女は俺をこの部屋に縛り付けた。一回も外に出られないなんて、おかしいだろ。
帰れた時に困るからある程度筋トレはしても、
今まで外にでて動いてた量とは比べなくても結果は見え見えだった。
恐ろしいくらいに筋力が落ちた。

皆、どうしてるんだろう。


「エレン?私、今日合コンだから遅いの。私のシンユウ呼ぶから安心して」

「は、はい!」

「うん、いいこ。じゃ、行ってくる」

「お気をつけて」

さらりと俺の頭を撫でて、あっつい化粧をした女は出て行った。
こいつの親友なんて、こいつと同じで腐ってるに決まってる。
女がさわってきた髪が気持ち悪い。

もう、帰りたい。
俺とジャンが殴りあって、アルミンとマルコが止めようとして、
結局ミカサが止めに入って、俺とジャンはまだにらみ合ってて、皆笑って。
俺は一生、ここで暮らすのか?そんなの、耐えられる訳がない。
たった2ヶ月で俺は女に逆らう事ができなくなった。
きっとしばらくすれば、皆の顔すら思い出せなくなるんだろう。


***


部屋の隅の、デカイ観葉植物の隣に座る。皆の顔を一つひとつ確認しながら。

ガチャガチャ。ドアから音が聞こえる。
あの女が帰ってきた?嫌、夜中まで帰って来ないって言ってた。
じゃあ、親友とやらか。そういえば、こっちの世界の人間に会うのは二人目だ。
一人目はあの女。胸くそわりぃ。

廊下の方からガタガタ音がする。
確か廊下には人形がたくさん置いてあったっけ。
ドアを蹴破る勢いで入って来たのは長い髪の女だった。
ぱっとみの年齢は、俺と同じくらいに見える。

あの女の染めた金髪とは違う、地毛らしい焦げ茶の髪。
化粧は全然していないように見える。
不機嫌そうに眉間にシワがよっている顔がこちらを見た。
その瞬間開かれる黒茶の瞳。あれ、この人があの女の親友?

俺は咄嗟に顔ごと目を反らした。あれ以上見てたら、ほだされる気がした。
親友らしき人は小走りでベランダに向かうと、干してあった服を乱暴に部屋に入れた。
もしかしてこの人もあの女と同じで、殴ったり、包丁で脅したりするのか?

そう思うと怖い。もしかしたらこの人も「紙の中の俺」を知ってるのかもしれない。

「はじめまして!」

勢いよく振り返ったその人に、俺は軽く悲鳴を上げつつもなんとか返す。
さっきの眉間にシワが寄った、いわゆる怒った表情ではなくて、とても笑顔だった。
笑っていると俺より幼く見えるけど、さすがにそれは無いよな。
ゆっくり歩いて来て俺の前でしゃがむ。
何でわざわざしゃがむんだ?

「私は名無しさん。10代後半。チワ・・・少年は?」

「あ・・・俺は、エレン。13歳、です」

「エレン君か、よろしくね」

チワ・・・?十代後半ってことは、少なくとも俺より年上なのか?
手を出して来るから一応俺も手をだす。
すっげー力で握られたらどうしよう。

そんなどうしようは起こらず、とても柔らかい、小さい手だった。
その手は一瞬で離れてしまったけど、この人が優しい人だってことは分かった。

ついでにといった風に頭を撫でられたけれど、
あの女とは違って不快感は一切無かった。

あの女とも、ミカサとも、母さんとも違う気分になった。






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