めいん!

□チョコレート中毒
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名無しさんは何よりチョコレートがだいすきだ。
チョコと魔法薬学があれば生きていけるほどに。
友達が悪戯仕掛人かっこいいよねと話す中、ひたすらチョコを食べるのだ。
早く昼食を食べに行って、早く終わらせてチョコを食べるのが彼女の日課だ。

「名無しさんってお昼無駄にはやいよね」

「いつものことじゃん!」

二年生の1月。
この日もいつも通りチョコが入ってる袋片手に大広間にいた。
チョコの袋を逆さまにすればすごい音と共にチョコが溢れ出す。
やっぱり冷却呪文と拡張呪文は便利だと、毎度のことながら実家の母に感謝する。
お昼御飯を素早く食べ、出したチョコを食べる。
チョコ8、御飯2の確立で。
晩御飯しっかり食べるからセーフだというのが彼女の持論だった。

「あ、みて、珍しいわ、悪戯仕掛人よ!ああシリウス様かっこいい…」

「チョコうめぇ」

友達が名無しさんの右手をつかんで振り回す。
やめろ、チョコが食べれない。

「きゃあ、シリウス様が此方に向かってくるわ…!!
名無しさん食べるのやめなさい、シリウス様を拝みなさい」

「このチョコもおいしい」

シリウス様が、シリウス様がと騒ぐ彼女をほおっておいてチョコを食べてると
名無しさんの大事な大事なチョコに影がさす。

目の前にはくしゃくしゃな髪の毛のメガネと
さらさらな黒髪で目が灰色なイケメンと
それらの後ろにいるおどおどとした人と
色素の薄い顔に傷のある人だった。

彼らは確か悪戯仕掛人だったか。
そして同寮の先輩だ。
名無しさんは悪目立ちする彼らと関わった事はない。

顔に傷のある人は一言
「チョコレートっておいしいよね、幸せになる」
と仰った。
黒髪のイケメンは顔をしかめていたけれど名無しさんは笑った。
この人同類だわ!と。

「おいしいですよねチョコレート!!先輩も一ついかがですかっ!」

チョコの山からおすすめのチョコを差し出す。
口のなかに入れたとたん、ビターチョコ独特の苦さが広がるのに
それを包み込むようなミルクチョコの甘味…!

名無しさんがそれおすすめなんですと叫ぶと躊躇なく口に入れる。

「うそ、名無しさんが他人にチョコを…」
「チョコ好きならいいの。生半可なきもちでチョコを弄ぶな」
「えぇー…」

名無しさんはチョコを愛してるので基本的に他人にはあげない。
分けてあげる方がチョコに失礼だと思っている。
彼女の愛は斜め上を進むのだ。

「おいリーマス、なんで食った!
もし惚れ薬とか入っていたらどうするんだ!」
「彼女が自分で食べる為に買ったものなのに惚れ薬入れるの?
シリウスってばおもしろいや。
僕に惚れ薬とか入れるなら、
シリウスのプレゼントには毒薬入ってるよ」
「なんで当たりキツいんだよー…」

今日、たまたま早く大広間に来たらお菓子を大量に食べてる子がいた。
ただそれだけのことだ。
目の前でチョコの感想を待っている後輩が
悪戯仕掛人である自分たちになにか仕掛けるとは思わない。
しかも惚れ薬を作れるほど頭が良さそうかと聞かれれば
NOと答えたくなるような、呑気な顔をしてるとリーマスは思った。

リーマスはシリウスと話終わったため名無しさんの方を向いた。
彼女が勧めてきたチョコは初めて食べたし、それなりに美味しかったのだ。
(リーマスにしては珍しく)裏も何もなしに
素直に美味しいと伝えれば名無しさんは嬉しそうに笑った。
この人はやはり同類だわ、そう思って。

「ありがとうございます!
そのチョコの美味しさを理解してくれる人がいてうれしいです!
先輩、お名前聞いてもいいですか?」

「ふふ、このチョコ、少し複雑な味がするから理解者が少ないのかな?
僕の名前はリーマス。君は?」

「私、名無しさんです!
チョコレート中毒者の二年生です!」

「よろしくね」
「はい!」

これが二人の馴れ初めだった。
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