パラレル

□甘い戯れ
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そうは言ってもこの状態で彼女を放り出すのはさすがに可哀想だから、集中して手を動かした。
横の千鶴は顔を俯けてじっとして、そこから微動だにしない。
暫くのち、総司はタンッと軽快にキーをたたいて、ファイルを保存すると、ノートパソコンを閉じて、書類を揃えてホルダーに仕舞う。
総司が仕事を終えたらしいことはわかるだろうに、千鶴はそのまま。

総司は素知らぬふりで「終わったよ。お待たせ。」と声をかけたが、千鶴からの反応は、やはりない。
総司はちょっと反省して、テーブルに置かれていたポッキーを1本摘んだ。

「……ち・づ・る。」
俯いた千鶴の頬をくすぐりながら、顔をあげるように促す。もう片方の手は、彼女の両手にギュッと重ねて握る。
千鶴は観念したように、そろっと顔をあげた。
途端、視界に飛び込んできたのは、ポッキーを口に咥える総司。
「!」
ポッキーを咥えながら器用に口の端をあげて笑んだ総司は、ポッキーを揺らして無言で先を促す。

頬を赤くしながらも悔しそうな千鶴は視線を泳がせていたけれど、突如顔を向けて、ポッキーに齧りついた。
総司はじっと千鶴を待つ。
千鶴は始めから十分近い顔に耐えられないのか、目を閉じながらゆっくりカリカリとポッキーをかじる。そして時々、薄目を開けて距離を測っている。

……何を企んでいるかは、かわいそうなほど透けて見える。
恐らく意趣返しで、自分も同じように寸でのところで総司をかわそうとしているのだろう。

もうあと2センチ。千鶴の口元にグッと力が入ったのを感じて、総司は大きく口を開け残りのポッキーごと千鶴の唇に噛みついた。

「×△*〇?」

言葉にならない、――実際、口が塞がれていて発することもできない――驚きで千鶴が目を白黒させている間に、総司はべろりと唇を舐め、チョコの甘さとクッキーの固さと、唇の柔らかさと千鶴の匂いを味わった。
「そ、総司さん!!」
千鶴は総司の肩をポカスカ叩き、抗議の意を示すが、総司はもちろんそんなことはお構いなし。空いていた手を千鶴の後頭部に回すと、しっかとホールドしてさらにキスを深める。
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