小話
□春のアバコン小話ログ
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【桜の木】
――…ある森の中を誰かが歩いていた。
一人は天使のような姿をしたデビル
もう一人は長い髪を二つに結ったアナザー
その少女の手には、西の魔女が手にする杖とよく似ている。
そしてエメラルドの王冠、とあるデビルが纏っているドレス。
それだけを見れば、どこかの姫にも見えなくはない。
彼女を導くように、デビル――…ウァラクはその先を行く。
『主、この先を左に行けば道は開けます。』
「ん…。そっか……って、…あれは?」
少女は立ち止まり、ウァラクが言った方向とは逆に走り出してしまった。
『あ、主…!』
慌てて彼もその後を追う。そして、そこには……
『……!』
見事な花を咲かせた桜の木があった。
その美しい光景を見て、思わず息を呑んだ。
「…綺麗だねー」
少女はウァラクの隣にやって来て、楽しそうに言った。
『…そうですね。こんな所に立派な桜があるなんて…』
「ワリとちょっとした所に"光"もあるのかな…」
『…そうかも…しれませんね』
その言葉に頷き、少女はウァラクの前を行き、桜の木の下に立って、ポツリと呟いた。
「この先に、光があらんことを。」
その言葉に反応するように、少女の杖がキラリと輝き、桜の花弁が舞った。