小話

□春のアバコン小話ログ
2ページ/7ページ

【桜の木】


――…ある森の中を誰かが歩いていた。


一人は天使のような姿をしたデビル


もう一人は長い髪を二つに結ったアナザー


その少女の手には、西の魔女が手にする杖とよく似ている。


そしてエメラルドの王冠、とあるデビルが纏っているドレス。


それだけを見れば、どこかの姫にも見えなくはない。


彼女を導くように、デビル――…ウァラクはその先を行く。


『主、この先を左に行けば道は開けます。』


「ん…。そっか……って、…あれは?」


少女は立ち止まり、ウァラクが言った方向とは逆に走り出してしまった。


『あ、主…!』


慌てて彼もその後を追う。そして、そこには……


『……!』


見事な花を咲かせた桜の木があった。


その美しい光景を見て、思わず息を呑んだ。


「…綺麗だねー」


少女はウァラクの隣にやって来て、楽しそうに言った。


『…そうですね。こんな所に立派な桜があるなんて…』


「ワリとちょっとした所に"光"もあるのかな…」


『…そうかも…しれませんね』


その言葉に頷き、少女はウァラクの前を行き、桜の木の下に立って、ポツリと呟いた。


「この先に、光があらんことを。」


その言葉に反応するように、少女の杖がキラリと輝き、桜の花弁が舞った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ