〜真珠ひとしずく〜破天荒三人組と新選組の時空奇譚 壱

□2話 詮議と“はじめまして”
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 そう―――ここが、彼の「新選組」の屯所であるということも、三人は既に察知していた。

 無論、未だ実感はないが。

 考えてみれば、昨夜この男二人が来ていた羽織はあの有名な浅葱の隊服であり、そのだんだら模様も覚えている。










「おい、てめえら。なにこそこそしてやがる」

「「「いや、べつに?」」」

「「「………」」」










 この状況について思い思いに感想を言い合っていると鋭い眼光を以って凄まれるが、三人はそれにあっけらかんと応える。

 すると、妙な顔をしてきたのは男三人のほう。









「つーか、隠すことなんざ、なんもねぇしな」









 不琉木がどっかりと胡坐をかきながら飄々と言う。

 そして和も、「あ」となにか思い出した様な声を出し、視線がそこへ集まる。









「そうだ――――昨日は助けて頂き、ありがとうございました。手当ても、助かりました。ほら不琉木も和輝も、礼!」









 見知らぬ他人と年上と思われる人間には自ずと丁寧語且つ敬語になる和が

 例え見知らぬ他人と年上と思われる人間でも、良く言えば物怖じせず悪く言えば少々無礼な不琉木を特に促して

 流れるような所作で畳に両手をつき、頭を下げた。

 促された二人も、和に言われてそれぞれの反応を示す。










「あ、あぁ…ありがとう、ございました?」

「…和輝、なぜに疑問?」

「さんきゅー」

「「「さん…?」」」

「不琉木、それ通じないだろうが」

「だろうなー」

「しかも、何気敬語じゃないし」

「もちろん知ってるぜ」

「「「………」」」











 これを漫才と言えるかどうかは定かではないが、とにかく
 この場にとてつもなくそぐわぬ呑気も呑気な会話であることは間違いない。
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