〜真珠ひとしずく〜破天荒三人組と新選組の時空奇譚 壱
□2話 詮議と“はじめまして”
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そうこうしているうちに、話の流れで最初に名乗ってきたのは男達の方で。
そしてその名前は、特に幕末を研究対象にしている和には大いに聞き覚えのあるものであった。
そして不琉木も和輝も、やはり覚えがあった。
細面の役者の如く整った顔立ちの男―――土方歳三
飄々としていて読めない笑みを浮かべている男―――沖田総司
無表情且つ無愛想で静かな気配を纏った男―――斎藤一
それぞれに個性的な面々で、一発で覚えることができた。
そうすれば、必然的に三人としてもようやく名乗ることになる。
ちなみに、不琉木は下の名を断固として言わなかった。
なぜ言わないのかと凄む土方と、不敵な笑みを浮かべつつやはり鋭い視線でかわし続ける不琉木の攻防劇は
――――あまりに長すぎるので省略させてもらう。
「小蔵に、不琉木に、土浦、か……やっぱり、聞いたことのねえ姓だな」
土方がそう呟くと、また沖田が口を開く。
「それにしても、その格好面白いね?ねえ一君」
「…奇妙、だな」
「「「だ、ろうな」」」
奇妙、と言われた三人も迷わず首肯する。
なにせ、その出で立ちはTシャツにズボンという洋装に、上着だけが和服の羽織や甚平という、変な取り合わせなのだ。
不琉木だけが、辛うじて全身甚平という和服姿。
現代だろうが江戸時代だろうが、これは誰がどう見ても変にしか思えないだろう。
ちなみに、三人は昨夜から裸足である。
「一応聞くが、この国のモンだな?」
「髪も瞳も、黒ですしね」
奇妙だとは言っても、これが洋服だということはなんとなくわかるのだろう。今度は根本的な民族の所属を聞かれた三人。
いや、髪も瞳も黒だからといって日本人とは限らないけど…と内心で密かに反論する。
すると
なにやら考え込んでいた土方が、両脇に座っている斎藤と沖田に軽く目配せをした。
…と、そう思った刹那
――――銀の弧が二つ、目にもとまらぬ速さで虚空を一閃した。
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