〜真珠ひとしずく〜破天荒三人組と新選組の時空奇譚 壱

□8話 まさかの幕末バレエ到来
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 和輝は怒るでもなく苦笑する。

 まぁ確かに、和だけとは言わず三者三様に、性格から何までバラバラだ。その自覚はある。




「ち、違ぇって!んー、なんつーかさ、よくわかんねえけど…」

「ま、ある意味、和が女っぽくねえから、斎藤がああして普通に接していられるんだろうがな」

「あー、一君、女の免疫ねぇもんなぁ」

「そうなのか?」

「うん、一君って真面目だし、基本的に寡黙だから冷たい印象受けるしさ。多分、今迄そういう経験ないぜ?」

「へぇ…でも小蔵は、斎藤のこと面白くて、一緒に居て落ち着く人って言ってたぜ?」

「和(のどか)が?最初から?」

「最初っからって言うかなんというか。ま、小蔵に言葉以上の他意はないだろうけど。あいつもそういうことに関しては疎いし経験皆無だしな」






 なるほど。つまりは奥手同士と、そういうことか、あれは。

 そんなことを三人が同時に思ったのは、誰も知る由がない。






「和輝、お前はどうなんだ?」

「何が」

「斎藤だけじゃねえ。一度聞いてみてぇと思ってたんだ。俺達のこと、どう思ってんのかってな。これでも散々、壬生狼だ人斬り集団だって言われてんだぜ?」







 池田屋事件からこっち、新選組の名は良くも悪くも全国に広がっている。

 中でも、尾ひれ背びれがつくのは定石な人の噂では、悪い方が多いのが現実。無論、それを逆手にとって土方なんかは色々と画策しているわけであるが。

 原田に尋ねられ、「うーん」と和輝は少し考え込む。






「まぁ、なんていうか…俺だけに関しちゃ、今迄けっこう世の中のどす黒い部分見てきたからな。
 その人斬りの部分に関しちゃなんとも言えないっていうか、まぁ、あれだ。新しい知り合い?みたいな感じだな」







 事実、今自分達は衣食住を世話になっている。

 そこに関しては感謝しかないし、それに新選組がやること考えることに口を出す気もなければ気にしようとも思っていないのが正直なところ。







「最初はどうなるかと思ったけど、とりあえず今は、少なくとも平助達を悪人とは思ってないな。それより、そっちこそどうなんだ?」

「え?なにが」

「うん?」




 逆に質問された平助と原田は首を傾げる。




「だから、俺達のことをどう思ってんのかって。一応、まだいろいろ疑ってんだろ?」




 和輝としては何を気負って言ったわけではなかったが、二人は微妙な顔つきで頭をかく。



「うー…正直、俺には土方さんがどう考えてるのかわかんねーけど…けど!俺は和輝のこと怪しいとか思ってないぜ!!」

「いや、そこまで力説しなくてもな。一応幹部だろ、おい。ちょっとは疑え」

「ま、今のところ俺らと敵対するとことの繋がりははっきりしちゃいねぇし、むしろそんな情報は皆無だ。
 山崎達がこれだけ探って何も出て来ないんだ。俺も、そう言う意味じゃもうあまり疑っちゃいねえのが正直なところだな」






 原田の答えに「そうか」とそれとなく頷きながら、和輝は思う。



(そりゃ出てこないよな。この時代の人間じゃないし)
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