〜真珠ひとしずく〜破天荒三人組と新選組の時空奇譚 壱
□12話 想い
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時は少し遡り、三人が川沿いで逃走劇を繰り広げている頃――
「くそ…気配がねぇからやりにくいな」
「左之さーん!」
「おう、平助。いたか?」
バラバラに手分けして探していた平助が、原田の元へ駆け寄ってくる。
互いに休む間もなく走りまくっていたから、息切れはしていないしまだまだ走れるとはいえ、額には少し汗が滲んでいた。
「全然駄目。もう市中にはいねぇんじゃねえかな」
「だな。こんだけ何もねぇのに見つからないんだ。とすると、あとは……」
その時、斎藤もまた合流する。涼しい顔だ。けれど、彼もまた、やはりその着流し姿で休みなく走っていたクチである。
「…左之、平助。今しがた、あちらのほうで三人組の男女を見たという者がいた」
「なにっ」
「じゃ早く行ってみよーぜ!」
「…ああ、急いだ方が良いやもしれぬ。その三人組は、男二人に追いかけられていたらしい」
「は?!」
斎藤の言葉に、原田と平助は急いでその方向に足を向けた。
先の大火で焼けた市中を駆け抜ける。何事かと、道行く人々が目を向けてくるが、そんなものは知ったこっちゃない。
「まさか、また長州の残党じゃねえだろうな」
「…可能性は、否めぬな」
「つーか!なんで和輝達が目ぇつけられんだっての!!」
「馬ぁ鹿、平助。俺達と少しでも関係あることがわかりゃ、奴らにはそれだけで十分な理由になるんだよ」
向かったのは東を流れる大きな川。
ところでこの三人、単に新選組幹部だからというわけではないが、視力はすこぶる良い。
「左之さん!あれ!!」
平助が声を上げて指を指し示す。
川上を見ると、遠くに人影が五つ見えた。
その内の三つを、瞬時に知った者のそれだと確信した原田達は、散々走り回ったにも関わらず更に加速して道を駆ける。
橋の上で、あの三人が浪士に対峙している。
斎藤達が鋭く声を上げ、呼びかけたのと
浪士達がその声に一瞬気を逸らし、
その隙に和と不琉木が、浪士の腰からもう一本の刀を引き抜くのは
ほぼ同時であった。
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