〜真珠ひとしずく〜破天荒三人組と新選組の時空奇譚 壱

□1話 月夜の逢瀬
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満月が、綺麗だった


この日ほど、月を妙に澄んだ心地で見上げたことはないかもしれない―――


〜* 〜* 〜* 〜* 〜* 〜*


「いやぁー、良い月夜だなお二人さん☆」



 のんびりとしていて、尚且つあっけらかんとした風情の声が夜闇に響く。

 人気のない路地に、見るからに風変わりな

 ――そう、比喩でもなんでもなく言葉通り、明らかに場違いな風貌をした、三人の男女がいた。





「そうだな、さっきも同じこと聞いたけど。現在通算五回目」

「いや、通算七回目だな」

「そうか?ま、聞き流せ☆」

「てか、お前声でけぇよ不琉木。少しは自重しろ」

「んぁ?わりぃわりぃ」

「和輝、いつも以上に無駄にテンション高い不琉木に対してなんて不毛な…」

「敢えてだ敢えて。とはいえまぁ、この状況はそうなりたくもなるってもんか」





 全く悪びれた様子もなく飄々と言ってのける、その態度には慣れているらしい。

 「無駄にテンション高い」連れ――不琉木 玻那(ふるき はな)の受け答えに

 言葉ほど実際には大した反応を見せず、あっさり受け応えたその二人も、やはり、夜空を見上げて大した内容のない会話を続ける。





「なんていうか、ちょっと暑いな」

「んー…まぁ確かに」





 襟元を掴んでボヤく土浦 和輝(つちうら かずき)であるが、実のところ“ちょっと”どころか結構暑い。

 その彼に応える小蔵 和(こくら のどか)も、額に汗を浮かべていた。





「関東も相当だが、やっぱこっちの湿度もハンパねぇな☆」

「さすが温暖湿潤気候」

「ていうか、これは時間軸の違いもあるんじゃないか」

「言えてる。旧暦とかわからないけど、多分同じくらいの季節だよなこれは」

「道がコンクリート化してないし。街灯もないと、本当に月明かりが頼りだったんだな」





 淀みのない、三人分の足音。


 ふいにピタリと止まる。





「…」

「…」

「…」





 間。





「「「で、今は一体何年なんだ?」」」
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