〜真珠ひとしずく〜破天荒三人組と新選組の時空奇譚 壱
□3話 まさかの腕試し
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はじまった奇妙な居候生活
あらゆる意味で興味を持たれた三人組は―――
〜* 〜* 〜* 〜* 〜*
「い、井戸の水汲みって、こんなに大変だったんだ…」
「やべ、昔の人マジ尊敬する」
「さすがにこの経験はなかったぜ」
「昔、ですか?」
「いや、なんでもないから千鶴ちゃん」
「?」
この日、三人は朝から井戸端で悪戦苦闘していた。
突然京に落ちて(?)きてから早三日。
なんの目的もない三人は暇なことこの上なく、ついでただ飯食いは忍びないからと、主に和(のどか)が手伝いを申し出て今に至る。
屯所内での行動制限はあるといっても、こうして庭に出る程度は許されているが、やはりというか、常時見張られている。
姿は見えないから、どこかに身を潜めているのだろう。
つまり軽く軟禁状態。
土方には「変な真似をすれば即刻斬り捨てる」と言い含められ、沖田など何かと物騒な言葉ばかり言ってくる。
他の幹部達も、表立ってはにこやかだが、その瞳の奥には明らかな疑惑の念。
とはいえ。
だからといって三人が非観に沈み怯えているかといえば……しつこいようだが、それは皆無である。
それは元々の性格もあるが、まだまだ現実味が持てないことも大きかった。
とりあえず、目下の大きな関心事は、この大量の洗濯物だ。
「うわ、洗濯板だ。和輝、使ったことある?」
「さすがに皆無だな。つくづく、科学の発展って凄まじいと言うかなんというか…」
「…?かがく…?」
「あー、千鶴ちゃんは気にしなくていいよ。色々どうでもいい話だからさ」
もし何か言ったとしても絶対にわかるはずがない。
和に笑いかけられた千鶴は、首をコテンと傾げつつも「そうですか」と言って桶に向き直った。
雪村千鶴。彼女が、三人の指導者だ。
「やべー、腰いてぇー」
「足痺れるし腕つら…」
「てめえら、ちっとは静かにできねぇか!!」
「「「無理!!!」」」
洗濯を千鶴に倣いつつ始めてから、一時も口を閉じない三人に土方の怒声が投げつけられる。
が、三人も三人とて即答。
和輝が千鶴に称賛を贈る。
「雪村、だっけ?マジ尊敬する。これ全部一人でやってたのかよ」
「最初は驚きましたが…そのうち慣れますよ?」
「これ、ぜってぇ慣れるとかそういう問題じゃないぞ」
「うん、激しく同感」
明日は筋肉痛決定だ。
やはり自分達も現代人なんだなと思うと情けない。
そうしてなんとかやっていると、思いの外時間は過ぎてゆくもので。
「すみません、あたし、そろそろ勝手場の準備をしてきますね」
「あ、それならあたしも連れてって」
「え?」
「昼飯の準備だろ?料理なら好きだし、火の扱い方とか教えてくれると嬉しい」
「和ちゃんは料理得意だもんな☆俺らのママ的存在」
「ママ言うな」
「ま…?」
「ほっといていいよ千鶴ちゃん。ほら、いこう」
「「いってらー」」
ひらひらと水に濡れた手を振りつつ和輝と不琉木が二人を見送ると、少し間を置き、別の方向から誰かがやってくる。
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