〜真珠ひとしずく〜破天荒三人組と新選組の時空奇譚 壱
□4話 喧嘩両成敗
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奇妙でおかしな奴らだ。
だが――あいつらは、俺達に“なにか”を思い出させる。
〜* 〜* 〜* 〜* 〜*
「和さん、お身体のほうは如何ですか?どこか、特に痛いとか、おかしいなど…」
「痛いというか……全体的に、身体、おもい…」
「少し失礼しますね」
和さんからの了解をとったわたしは、失礼のないように触診しています。
雪村千鶴です。
父さまがお医者様でそれを手伝っていて少しは医療の心得があるので、恐縮ながら彼女の看病をさせてもらっています。
あと、「名前呼びで良い」と仰って下さったので、お名前で呼ばせて頂いています。
ああ、お背中の紫の痣が痛々しい…
「ヤバい…なんか、なんもやる気が起きないし出来る気がしない……重すぎる…」
「そりゃ、あんだけ血流せばな」
「気合いだ☆頑張れ和ちゃん!」
「そんな気力ない…」
先ほどから、しきりに身体が重いと呟いています。背中の痣よりも、そちらの方が和さんには深刻なのかもしれません。
和さんと不琉木さんと土浦さん。このお三方は、きっとお付き合いが深いのですね。
気軽な雰囲気で話しかけていますが、それが「敢えて」で、しかもとても自然なのがわかります。
それにしても…昨日は驚きました。
いえ、驚くなんてものではなく、本当に心臓が止まりました。
わたしは、最初はあの場にいなかったんです。隊士ではないですし、この頃はよく引きうけるようになった雑用をしていました。
一応、彼らが和さん達を相手に“腕試し”をするようだと、それは少し聞いていたので知ってはいたのですが…
偶然、近くを通りかかった時に、和さんの背に木刀が二本、強か打ち降ろされたのが見えて
――――持っていたお洗濯物を思わず落としてしまった時には、彼女は既に血を吐いてしまっていました。
血は、これでも見慣れています。父さまを手伝っていましたから。
けれど、あの吐血量は見るからに多くて
…まだ、和さんとは浅い付き合いでしかありませんが、とても気さくで親切で、こんなわたしと親しくしてくれていますし、お人柄の良い方だと思っています。
本当に、命に別状がなくて良かったです。
―――…あれ?
なんだか、あちらのほうからドタバタという足音が…
「これは」
「平助」
「だな」
「「 間違いなく 」」
今更だけど、とても息の合っているお三方。
案の定、スパーンと障子が開けられて、顔を覗かせてきたのは平助君だった。
「和輝ぃーッ、不琉木ぃーッ!」
今日も平助君は元気が良いなぁ…でも、和さんはお身体の具合が良くないのだし、もう少し静かにして欲しい。
「「「 やっぱな 」」」
「え、なにが?」
「「「 なんでもない 」」」
「あっ、和!目ぇ覚ましたのか!!」
「おー…平助は元気だな。もう身体重くってだるい」
「………」
…平助君、黙っちゃった。それにつられて、わたしも少し気持ちが沈む。
きっと、責任を感じてるんだよね…?
「平助?」
「…」
「…」
「…」
微妙な沈黙。
和さんは暫く「んー…?」と首を傾げていたけど…
「藤堂平助!」
「?!」
突然、少し声を大に名を呼ばれた平助君はぴょんと顔を上げた。かくいうわたしも、すぐ近くだったからちょっと驚く。
和さんは、既に布団に身を沈めていた。
「あーもー…大声出させるな。身体きついんだから…」
「わ、わりい…」
「平助」
「な、なんだ…?」
「まだそんな顔するなら、もう一度大声出すからな」
「へ?」
「そんな顔してないで笑ってて。笑う門には福来るっていうだろ?」
「??」
「あー、駄目だ…二人とも通訳お願い」
平助君は首を傾げている
…でも、和さんはきっと、平助君を気遣っているんじゃないかなって、思う。
「ま、誰の責任でもないってことだ☆な、和ちゃん」
「…いろいろ省略しすぎてるけど、結論はそうだな」
「というわけだ、平助」
「??」
「それで?平助はなにしにきたの」
「あ、ああ!いや、二人を土方さんが呼んでたから…でも、和、起きたもんな。どうしよ」
「和ちゃん、起き上がれるか?」
「んー…ごめん、無理っぽい」
「だよなー」
「あ、じゃあ俺、土方さん呼んでくるっ」
「おー、頼む」
土浦さんがそう言い終わらないうちに、平助君はぴゅーっと駆けて行った。
わたしは、これから皆さんが来ることを思って、少し周りを片づける。
これは、勝手な見方かもしれない―――でも、昨日から今日、皆さんはどこかバツが悪そうなお顔をされている。
わたしは何も言えないけれど、どうか、彼らの関係が良い方向にいきますように―――
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