〜真珠ひとしずく〜破天荒三人組と新選組の時空奇譚 壱
□5話 初めての剣の指南
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虚空に閃く 三日月のような銀の弧
鋭利な刃を見つめる 深淵のような紺藍の瞳
きっとこの時から 彼に心惹かれていた―――
凪いだ水面の如く澄んだ 水色の瞳
剣に対する 真摯で深く 真っすぐな想い
きっとこの時から 彼女に心惹かれていた―――
〜* 〜* 〜* 〜* 〜*
血を吐くという、この時代に来て初めて――どころか人生初の経験をした日から五日。
和(のどか)は部屋を抜け出して、人気のない場所をのんびり歩いていた。
ここ数日、やたら大人しくしていろだの寝ていろだのと五月蠅い数名が、ようやく部屋からいなくなったのを見計らって散歩している。
見つかるのも時間の問題かもしれないが、それでも外に出たかった。
正直、暇なことこの上ないのだ。
手首や足首に浮かんでいた紫斑は消えている。
あれは、自分が患っている病によるものだ。
いわゆる血小板という、傷を負った際に血を凝固する役目を担う物質が、自分は周期的に極度に減る。
何でもないことのように見えて、医療技術の発達し科学が進展した未来でも、原因も治療法も確立されていない疾病。
梅雨もそろそろ明ける季節。庭の土草はしっとり濡れていて、今日は少々曇っている。
西日本の真夏は関東以上に暑いんだろうなと思いながら歩いていると、そのうち何かの音が静かに聴こえてきた。
「?」
ひょっこり陰から覗くと
そこでは三番組組長である斎藤一が、一人、剣を無心に振っていた。
銀の弧が閃く。
その迅速さと言ったら、もはや、言葉でどうこう言い表わせるものではなかった。
凄い、凄まじい、驚異的 …
どんな言葉も陳腐に思えるし幼稚に聞こえる。
剣には流派がいくつかあるという。
それらのことを和は知らないし、斎藤がそのどれに属するものなのかもわからない。
だが、全身に鳥肌が立ち、また総毛立つのを感じた。
それを一種の興奮だということにも気づいていた。
(こうだっけ?両手はこうして…)
無意識の内に、和は想像した竹刀を手に持って、いつか授業で習った剣道の動きを思い出す。
武道には幼い頃から憧れがあった。
母親の関係でバレエをずっと嗜んできているが、それが西洋のものであるからか、東洋…つまり日本の武芸を身につけたいという渇望がある。
けれど人生、そう上手いことはなく、ただ授業で体験程度に剣道を習ったのみ。
「道」とつくものは数多あるが、その中でも「剣」という響きには何故か強い思い入れがある。
だから
斎藤の剣をこうして間近で見た瞬間
どうしようもなく、自分も剣を振るってみたいと思ってしまった。
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