〜真珠ひとしずく〜破天荒三人組と新選組の時空奇譚 壱
□13話 決意
1ページ/6ページ
どこに行く?
どこに居る?
…そこに居た
…そこに居る
〜* 〜* 〜* 〜* 〜*
ズキッ…と、鋭い痛みが脇腹から髄まで響く。
手を当ててみれば、そこまで深く刺さっているわけでもないようだが、このままにしておいて変な風に肉体を抉っても困る。
そんなことを、無意識下の本能が思ったのか、和は脇腹の小刀をズ…と引き抜いた。
途端、ドロリと赤い血が水中に沁み出してゆく。それは、濁流に呑まれて直ぐにかき消えた。
たが正直なところ、今はそれに構っている場合ではなかった。
「……ッぅ……かはっ……ッ!」
(…………やば、い…)
見た目ほど激しい流れではないが、川の水が濁っている上に、泳ぎはあまり得意ではないときて、かなり焦っていた。
方向が全く定まらないばかりか、油断すると水上と水中の区別もつかなくなりそうだ。
顔が水面上に出たり、沈んだり、また浮かんだりということを幾度も繰り返す。
怪我のせいか身体も思うように動かず、加えてついさっきまで結構な時間を全力疾走していた。体力は既に随分と削られている状態だ。
だんだん、息が苦しくなってくる。もう、自分がどこを向いているのかさっぱりわからない。
ドゴッ……
(――――?!)
身体のどこかに、固くて重い何かが当たる強い衝撃。
拍子に詰めていた息が零れ、同時に意識が薄れる。
身体が、完全に水中に沈んだ。
ゴゥゴゥという激流の雑音の中
何かが自分を引き寄せようとするのを辛うじて感じた刹那
和の意識は、ぷつりと途切れた―――
→
次へ
[
戻る
]
[
TOPへ
]
[
しおり
]
カスタマイズ
©フォレストページ