〜真珠ひとしずく〜破天荒三人組と新選組の時空奇譚 壱

□13話 決意
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 どこに行く?

 どこに居る?



 …そこに居た

 …そこに居る

〜* 〜* 〜* 〜* 〜*


 ズキッ…と、鋭い痛みが脇腹から髄まで響く。

 手を当ててみれば、そこまで深く刺さっているわけでもないようだが、このままにしておいて変な風に肉体を抉っても困る。

 そんなことを、無意識下の本能が思ったのか、和は脇腹の小刀をズ…と引き抜いた。

 途端、ドロリと赤い血が水中に沁み出してゆく。それは、濁流に呑まれて直ぐにかき消えた。

 たが正直なところ、今はそれに構っている場合ではなかった。




「……ッぅ……かはっ……ッ!」


(…………やば、い…)




 見た目ほど激しい流れではないが、川の水が濁っている上に、泳ぎはあまり得意ではないときて、かなり焦っていた。

 方向が全く定まらないばかりか、油断すると水上と水中の区別もつかなくなりそうだ。

 顔が水面上に出たり、沈んだり、また浮かんだりということを幾度も繰り返す。




 怪我のせいか身体も思うように動かず、加えてついさっきまで結構な時間を全力疾走していた。体力は既に随分と削られている状態だ。

 だんだん、息が苦しくなってくる。もう、自分がどこを向いているのかさっぱりわからない。




 ドゴッ……




(――――?!)




 身体のどこかに、固くて重い何かが当たる強い衝撃。

 拍子に詰めていた息が零れ、同時に意識が薄れる。

 身体が、完全に水中に沈んだ。






 ゴゥゴゥという激流の雑音の中


 何かが自分を引き寄せようとするのを辛うじて感じた刹那


 和の意識は、ぷつりと途切れた―――
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