〜真珠ひとしずく〜破天荒三人組と新選組の時空奇譚 壱
□【序ノ巻】
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とある月夜。
その男達は、夢から覚めた。
「あれ、一君じゃん」
「…平助か」
「どうしたんだ?一君がこんな時間に起きてるなんて珍しー。あ、俺にも水くれよ」
「…それは、あんたも同じではないのか」
「あー、うーん…いや、寝てたんだけどさ。なんか、目ぇ覚めちまって。なんでだろ」
「……」
「あれって夢なのかなー…なぁんか、妙だったよなぁ」
「夢…?」
「んー、夢って断言できるほどハッキリしてなかったんだけどさー。でも寝てたわけだしなぁ。あー、なんだろ、まだここらへんがモヤモヤする」
「……あんたもか」
「へ?」
「――うん?斎藤に平助じゃねぇか。そんなとこで逢引きか?」
「な…っ、ちょ、左之さん!変なこと言うなよな!!」
「…いちいち大袈裟に反応することでもなかろう。左之のこれはいつものことだ、声が大きい」
「う゛」
「ははっ。相変わらずだな、斎藤も平助も」
「…して、あんたはなにゆえ、このような刻限にここにいる」
「そりゃこっちの台詞だぜ。ま、お互い様か――ちっとな、妙な夢見て目が覚めたってとこだ。とはいえ、あれが夢だったのかどうかよくわからねぇが…」
「左之さんも?」
「ん?なんだ平助、お前ぇもそのクチか?で、その顔からすると、斎藤もか」
「……」
無言をもって応えたその男は、スっとその瞳を夜空へ向ける。
ほんの僅かに欠けた月。
伸ばしたその指先が、よもや届くのではないか――そう錯覚してしまうほど、今宵の月はこちらに迫りくるようなものであった。
男は無意識のうちに、その左手を持ち上げる。
そう…夢の中でそうしたのと、同じように。
なにもない虚空。指先は何も触れることはなく、掴むことはない。
ただ、緩やかな夜風が、水に湿った指先を撫でて通り過ぎてゆくのみ。
その風の中に、夢で朧気に微かに聴こえた声が、あったような気がした―
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