〜真珠ひとしずく〜破天荒三人組と新選組の時空奇譚 壱

□2話 詮議と“はじめまして”
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「んで?これは命の危険が続いてるって考えるべきか?」

「警戒されてるってことは、確かだな」

「まー、当然だな。この時代の人間にゃ、俺らは珍妙だろ」

「「珍妙な」」





 不琉木の変な物言いに苦笑するが、しかしそれが言い得て妙なのも確かで。

 昨晩、察するに「屯所」と呼びならわされている場所に連行されてきて、何も詳しい説明も無しに部屋に放りこまれた三人。

 というか、まともに誰かと会話した記憶もない。




 だが




 今の自分達の状態を見れば、少なくとも無条件に歓迎されているとは言い難いということが
 どんな言葉よりも如実にわかるというもの。
 
 昨夜、本物の刀を持った浪士達と対峙している最中でも、あまり現実味が湧いていなかった三人であるが

 時間が経つにつれ、ここが真に幕末の世界であるということを、全身全霊で痛感するようになっていた。

 そして、事の次第によっては殺されるかもしれぬという可能性に、気付かぬほど三人は各々に馬鹿でも鈍感でもない。






 それでも

 こうして落ち着いて笑え、微塵の恐怖も感じていないのは
 ―――生来の気質と、やはり本当の意味で現実感を持てていないことの、その両方が原因だったろう。




 
 その時




 ふっと黒い影が部屋に差し、静かな威圧感と共に障子が開け放たれた。










「だぁッ、まぶ!!」

「だから声でけえっての」

「和輝、諦めよう」

「――ぎゃあぎゃあ騒ぐんじゃねえよ。で、こいつらなのか」








 部屋に入ってきた光と影に様々な反応をする三人に、若干呆れたような
 ――だが鋭い声音でそう言ってきたのは、それまた初めて聞く男の声であった。

 逆光で顔がよく見えない。

 その男の後ろから、今度は聞き覚えのある声も二つ、聞こえてきた。








「ええ、そうですよ」

「…確かに、この者達です」

「そうか――斎藤、総司。こいつらの縄ぁほどけ」

「あれ、いいんですか」

「…御意」







 差し込んできた外の光に目を瞬いていると、あっというまに縄は解かれる。

 再び締め切られた部屋の中で、ようやく目が慣れてきた頃、また男の一人が口を開いた。







「他の奴らには、こいつらはみられてねえんだな?」

「ええ、まぁ昨夜居合わせた隊士達は見たと思いますけど」

「そうか」




(うわ…なんかすごい威圧感ある)
(つか、なんだこの状況。尋問か?職務質問か?)
(だろうな。本格的に、江戸時代ってか、新選組まんまだな)
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