長編夢小説2

□四十章
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自宅の玄関を開けると、リビングの方から風が吹き抜けたきた。

ベランダが開いている証拠だ

靴を脱ぎ、リビングへと進めば私の頬は緩んでいた。











『あすか、あの丸いやつを頼め。』









久しぶりの飛影の訪問は、私の心を大変躍らせた。
両手に抱えた買い物袋を下ろし、
彼に近寄りいつものように頭を小突く。








『偉そうに。あすか様と呼べ、あすか様と。』










ソファに腰を下ろし、ご要望通りピザを注文する。
久しぶりに見る彼は、相も変わらず仏頂面でテレビを観始めた。



電話を切り、彼の飲み物を取りに キッチンへと立ち上がろうとした時
飛影が急に立ち上がり、キッチンへと向かう。


ソファから彼の様子を眺めると
彼はコーラをふたつ冷蔵庫から取り出し、スタスタとリビングへ戻って来た。









『飲め。』








彼は私に一つ差し出した後、自身の手にある缶をプシュっと開けた。

幼く冷淡な少年が、私へ向けたちょっとした気遣い。
それがひどく嬉しくもあり、照れ臭くもあった。









『残念、私は麦茶派です。』










せっかくの親切を、照れ臭いあまりこうして墜としてしまう。
彼は舌打ちし、再びテレビを見始めた。



笑いながらキッチンへと向かい、買い物した品々を冷蔵庫へと陳列させていく。

視線を感じ、リビングへ目をやると、飛影がこちらを凝視していた。









『運んで来ていたのか?いつも。』









そう言って彼は三白眼を見開いている。









『は?』










謎の発言に、私は作業を続けながら頭を悩ませた。

そしてようやく彼の発言を理解した。


いつも途切れることなく取り出される飲み物は、冷蔵庫の内側から補充されるものと

いわば魔法の箱のような存在だと思っていたようだ。


私は声を上げて笑いながら、ソファに腰掛けた。

飛影は不貞腐れたように、二本目のコーラを取りに行く。



久しぶりにこんなに笑った気がした。
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