長編夢小説2

□四十二章
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『楓か、いい名だな。』









足を組みベッドに腰掛けている躯は、穏やかに笑みを浮かべる。

翌日、私は陣に無理言って魔界に来た。

何かと心配をかけた彼女に、せめて一番に子の名前を報告したかったからだ。










『それにしても 結界がまだまだ未熟だな、陣。
近々俺が伝授してやろうか。』



『本当か⁉︎』










陣は目を輝かせピンと耳を立てた。
喜びも束の間、次の彼女の言葉に顔を青くさせる。









『習得時、過去に死んだ奴がいたがお前は大丈夫だろう。多分。』











硬直した陣を見て 、躯は悪戯に不敵な笑みを浮かべた。

いつもの冗談か本気かわからない彼女の発言に、つい吹き出してしまう。










『あすかに惚れてるなら、容易い修行だろ?』



『…っ⁉︎オラは、その…!あすかの事は…』









彼女の挑発に、陣は顔を赤らめ慌てふためいていた。

夕べの出来事などなかったかのような、彼の青臭さに私は少々呆れてしまう。










『で?あすか、陣は満足に機能したか?』










躯はニヤリと笑い、私に問いかけた。

彼女の下世話な質問に、私は少々眉を顰める。

遅れて意味を理解した陣は、夕べの出来事を思い出したのか、耳まで真っ赤になっている顔を歪ませた。









『躯っ⁉︎な、何言ってんべ⁈』










彼はあたふたと躯を制しながら、チラリと私を見た。

その表情が何とも頼りなく、少し意地悪をしてやりたくなり躯に便乗する。










『これからこれから。』










そう言って彼の肩を叩けば、耳を垂らした情けない姿に成り代わった。









『あすか〜…!』









彼の悲しげな声色に、私と躯はゲラゲラと笑った。
愛らしい陣の反応は、からかい甲斐のあるものだった。


楓も、陣のように純粋で愛嬌のある子になって欲しい。
そんな事を思えた瞬間だった。
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