長編夢小説2
□四十九章
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魔界へと到着した時、そこには百足の迎えが待っていた。
『躯、悪ぃな。』
『気にするな。』
躯は間髪入れずに私へ保護用の結界を張る。
久しぶりに見る魔界の空は、相変わらず淀んだ太陽に鈍く色づいていた。
百足に乗り込んだ三人に、躯が現状を告げる。
『飛影が邪眼で場所を突き止めた。今陣と二人でそこへ向かっている。』
『俺達も急ごうぜ!』
幽助はいてもたっても居られないという様子で、拳を掌に叩きつけパシンと鳴らす。
いつになく苛ついたように窓から流れる景色を眺めている南野。
私はこの混乱した状況に、忙しなく精神が乱れた。
躯はそれを諭すように私の肩を抱いた。
『あすか、心配要らん。相手は目的あっての事。楓は絶対に無事だ。』
彼女の言葉に、殺気立っていた私の心は再び落ち着きを取り戻す。
私は薄く微笑み、静かに頷いた。
『狐、相手はお前の宝を盗んだ。
妖狐蔵馬の名に恥じぬよう心してかかれ。』
躯の言葉に挑発されたように、南野は一瞬でその姿を変化させた。
目の前に現れた銀髪の姿は、いつか見た朗らかなものではなく
冷酷に金色を光らせた、酷く殺伐としたものであった。
微動だにしない白く恐ろしい出で立ちから漂うおぞましい殺気。
これが南野の本来の姿だと思うと、血の気が引いてしまう程怖かった。
『躯様、間もなくでございます。』
部下の報告に戦闘態勢になった三人は、神妙な面持ちで前方に佇む森を見据えた。
私はその真っ暗な森を睨み付け、楓を攫った奴等を今一度思い出す。
あの浮世離れした深い藍色の目をした美しい女。
息を飲むほどに彼女を取り巻いていたオーラ。
全てが謎に包まれて、私の胸は鼓動を早め始めた。