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□あなたに会いたくて!!
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 好きになったのは高校時代。
 隣に引っ越してきた俺より年が、十近く離れた男。
 
 最初に見た印象は優男。
 二度目に会った時は、いい人。

 三度目には何だか俺が少し懐いていて。
 四度目に会った時には、好きという感情があった。


 なのにある日突然、あの人は家から出てこなくなって。

 
 心配になって何度も家に行ったけど、あの人は一向に出てこない。電話にも出ない。

 何かあったのかって、そればっかりだった。

 そしてそのまま一度も会えずに、俺は高校を卒業した。
 今は大学に無事合格して、平々凡々な大学二年目を謳歌している。


 まだ実家暮らしなもんで、あの人の家の前を通るけど、あの人は未だ、部屋から出ない。
 いつになったら会えるんだ。
 会いたいのに。


 俺はまだ、あの人への気持ちを消せずにいるのに、全くなにをしているのか。



「会いたいんですけど、陸人さん」



 家を見上げると、締め切ったカーテンが見える。
 前まで手入れされていた庭は、今じゃ雑草だらけでひどいありさまだ。

「陸人さーん。会いたーい」

 小声で呟くように呼びかけて、届くわけないと自嘲気味に笑った。
 
 なのに。


「……ひ、びきくん……?」


 突然呼ばれた名前に驚いて、後ろを振り返った。
 奇跡とはいつだって突然に起こるものだ。


「陸人さん!」


「ひっ!?」


 そこには、昔より少しだけ老けた顔の陸人さんがいた。
 ずっとずっと会いたくて仕方のなかった陸人さん。

 気づけば俺は陸人さんに抱きついていた。

 俺よりも少し低くなった陸人さん。
 驚いて固まってる陸人さん。
 あぁ、可愛くて仕方がない。

 好きだよ、陸人さん!!


「会いたくて仕方がなかったんだ!!」
「おれ、は、会いたくなかった……」

「俺は会いたかったんだよ!!」

「……やめてくれよ。おれは君には会わないと決めた。今年中には引っ越すんだ」

「理由も言わずにまた逃げる気?逃がさないから。
 逃げるなら俺の気持ち聞いてから逃げろよ、陸人さん」






 最近迷走っぷりがやばいですね。
 

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