王子様達とたった一人の王女様

□第捌章
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愛野がこの学校に来て一週間もしない頃、色んな噂が流れていた。
男と女の接し方が全然違う事、男子テニス部のマネージャーになったなどの噂が広まっている。
マネージャーになった、の噂を聞いたファンクラブや女子達は騒ぎどころでは無い。
「ねぇ、聞いた〜?」
「何が?」
「ほら、今色んな意味で大いに話題になってる愛野 姫華!」
「あぁ〜、何か男子テニス部のマネージャーになったんでしょ?」
4人の女子生徒が輪になって、噂話をし始めた。
「放課後に入部届けをあの生徒会長でテニス部部長の跡部様に出したんだよね」
「そうそう!!てか、あんな奴が仕事すると思う?」
「まさにミーハーって感じだよね」
愛野の喋り方に女子生徒達は気に入らないらしい。
しかも、彼女が転校初日の時に部活はどうするかと言う質問に愛野は…。

『前の学校に居た時はテニス部のマネージャーをやってたからぁ、此処でもしようかな?』

それを聞いた瞬間、クラス全体の空気が一瞬にして固まった。
隣に座っていた忍足も眉間に皺を寄せ、嫌そうな表情で愛野を見た。
あの言葉から愛野に敵意を向く女子生徒達。
「まだ一週間も経ってないのに普通マネに希望する!?」
「良く跡部様は許可を下したよね」
噂は怖いものだ…。
直ぐにその噂が広まって、皆の耳に入ってくるのだから…。
とは言え、確かにあの生徒会長は良く許可を出したものだ。
そう簡単に許可を出すのだろうか?
ああ言う愛野みたいな性格は許可しない様な気もする。
何か問題でもあるのかしら…?っと思いながら本を読む裕子。
てか、行動に移すの早過ぎだと思うのは自分だけだろうか?
「何であんな女がテニス部のマネージャーになるのか分からないよ」
「あたし達は許可を許してくれなかったのにさ…」
「意味分かんない!」
愛野に対する怒りや嫉妬に落ち着きがない女子グループ。
「それは彼等に対する優しさだと私は思うわよ?」
そう言いながら輪になっている女子達の中に入り、そう答えた。
「優しさ?跡部様達が?」
「えぇ…ちゃんと応援をしてくれるだけで充分だと思うわ」
「その応援が有難いって事?」
一人の女子の言葉に裕子はコクリっと頷いた。
「応援をされるのが嫌いな人ってそう簡単には居ないと思うけど?」
ファンクラブの仕事は色々あるが、テニス部を応援するのも一つの仕事だ。
「別にマネージャーにならなくても、彼等の応援をするのが貴女達の仕事」
「…そっか」
裕子の言葉に、女子達は少しずつ落ち着きを取り戻してきた。




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