tinieblas
□ep.3
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「…いいなずけ?」
「そうだ。シリウスをお前の許婚とすることになった。」
待って待って待って。
私は再び混乱中です。
シリウスと2人揃って呼び出されて、何かと思えばこんな話だ。
いくら魔法界の純血名家の間で、イギリスの古い貴族的な慣習が残っていたとしても、3歳の幼気な子供2人に許婚って。
許婚、って。
…ほら、シリウスも頭の上に?マークが大量発生してるじゃないですか。
「偉大なるサラザール・スリザリンの血を遺すのに、ブラック家本家の血は最適だろうという結論に至ったのだよ、シリウス。わかるかい?」
「そういうことだ、エミリア。」
わかるわけないだろう。
オリオンおじ様もお父様も、3歳の幼気な子供達に言っていると理解しているのだろうか。
もし理解しているつもりなら、彼等は私達を買い被りすぎだ。
いや、私はわかるよ、意味はわかる。
ただそれを現実として受け入れられるかどうかは、全くの別物だ。
どう考えても、面倒事に巻き込まれるフラグしか見当たらない。
きょとん顔のシリウスと、きょとん顔をキープしている私の視線が絡み合う。
「まあこれからも、シリウスと仲良くしてやってくれということだよ、エミリア様。」
「…もちろん!しりうしゅは、ともだち!しゅき!」
満面の笑みでそう応えた。
このささやかな抵抗がお分かりだろうか。
分かれシリウス。頼むから。
願いを込めてシリウスを見つめると、彼も満面の笑みを浮かべた。
「おれ、エミリア、だいしゅきだよ!」
…ああ、こりゃだめだ。
幼気な子供らしからぬ、失望した表情を一瞬浮かべてしまったことくらいは、許して欲しい。