short story

□私の大事なご主人様
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『エーフィ、おいで!』
「フィ!」

優しい笑顔で私を迎えてくれるのは、私の大切な主のコノハちゃん。
私はコノハちゃんの所へ駆け足で寄っていく。
そしたらコノハちゃんは、よしよしと私の頭を温かい手でゆっくりと撫でてくれた。

私はエーフィとなった。
自分でそう決めた。

だってコノハちゃんは、よく格闘タイプのポケモン相手に怪我をすることが多かったから。
私のせいで…。

格闘タイプと相性の悪かったイーブイの頃の私は、敵の格闘ポケモンに何度も何度も攻撃された事があった。
私は立つのもやっとの状態で、すごく苦しかった。
そんな私を、コノハちゃんは身を呈して守ってくれた。
嬉しかったけど、痛かった。心が…。

私のせいで、コノハちゃんは大きな怪我をしてしまったから。
それでもコノハちゃんは、まだイーブイだった私をゆっくりと優しく抱き締めて、私を守ってくれた。

でも、その時のコノハちゃんの綺麗な黄緑色の瞳からは、ポロポロと沢山の涙が溢れ出ていた。

『私が未熟だから…』

ごめんね…と続けた後、相手のトレーナーを鋭く睨みつけるコノハちゃん。

そんなコノハちゃんを見て、私は何も出来ない自分に対して怒っていた。
わたしもコノハちゃんを守りたい。なのにどうしてこんなに弱いんだろう…と。

そんな時、一度コノハちゃんが見せてくれた、今の私の姿であるエーフィを思い出した。

エスパータイプのエーフィ。
格闘よりも強い、エスパー。

それを思い出した瞬間、私はコノハちゃんの腕から飛び出した。
コノハちゃんはそんな私の行動に、すごく驚いていたけれど、私の中で覚悟は決まっていた。

私は空へ顔を上げて、大きく息を吸った。

太陽が強く輝く、昼のことだった。












『今日も綺麗ね、エーフィは』
「フィ〜」

私を撫でながら、優しく微笑むコノハちゃん。
コノハちゃん、貴女の方が綺麗よ?
コノハちゃんと戯れていると、後ろから人の気配がした。
そこにいたのは…

「やあ、コノハ」

『あ、シゲル』

コノハちゃんの幼馴染で、今やコノハちゃんにとって大事な人であるシゲル君だった。

シゲル君は小さな頃からコノハちゃんに想いを寄せていて、ついこの間、やっと想いが実ったところ。
つまり、コノハちゃんもシゲル君の事が好きになったってこと。

そして私にも大切なひと(ポケモン)がいる。

「ブラッキー、エーフィもいるよ」
「ブラー!」

シゲル君の大事なパートナーのブラッキー。
私がまだイーブイの頃は、ブラッキーは私にとってお兄さんみたいなものだったんだけど、進化してから段々と、意識するようになってきたの。
そしたらいつの間にかブラッキーと友達を超えた関係になっていた。

ブラッキーは主のシゲル君に似てとっても紳士。でも、バトルの時は凛々しくてすごく格好いいの。素直にそう思った。

「コノハ、仕事は終わった?」

『え?うん、丁度今終わったとこだけど…』

「なら、これから二人で出掛けようか。町に美味しいパンケーキの店が出来たみたいだよ」

『…ま、まあ別に、行ってもいいけど…』

ただ私の主はいつも素直なのに照れ屋さんで、シゲル君の事になるといつも素っ気ない態度を取ろうとする。
そんなコノハちゃんをお見通しなシゲル君は、いつも楽しそうにコノハちゃんに意地悪してる。

「照れた顔も可愛いね」

『て、照れてない!!』

それでも幸せそう。すごくすごく。

だから私とブラッキーも、もっともっと幸せになれるし、毎日が楽しい。

「じゃあ行こうか」

『う、うん…!エーフィとブラッキーもおいで!』
「エフィ!」
「ブラッキ!」

二人がこれからもずっと幸せでありますように。
そんな願いを心の中で唱えて、楽しそうに歩く主達の後ろで、ブラッキーと小さく微笑み合った。


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