short story
□ポケモンはトレーナーに似る
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・シゲルのブラッキーと夢主のエーフィとのラブラブなお話です。夢主はほとんど名前しか出てこないです。
皆さん、こんにちは。私、エーフィと申します。
何をしているのかというと、私は今お留守番中なの。私のご主人様であるコノハちゃんは、幼馴染のシゲル君と近くに出来たクレープ屋さんへ出掛けに行ったところ。
だからそのシゲル君のパートナーであるブラッキーと、二人でのんびりと過しながらお留守番。
コノハちゃんがいないのは寂しいけれど、でも大好きなブラッキーと二人きりになれて、少し嬉しいかな。
あ、実は私とブラッキーは人間でいう恋人同士というもので、お互いの主達公認でお付き合いをしているの。
ブラッキーは本当にカッコ良いんだから。
とっても紳士で、私が危ない目にあいそうになった時もすぐに駆けつけてくれて、優しくて、すごく大切にしてくれて、ブラッキーを好きになれて私は幸せだわ。
「エーフィ、一人で何してるんだ?」
「あ、ブラッキー。実は貴方のことを考えていたの」
「俺のこと?」
「ええ。ブラッキーといれて幸せだなあって」
「まったく、本当に君は可愛いな」
そう言いながら私の顔をぺろりと舐めてくるブラッキー。いきなりのことに驚いた私の体はビクリと跳ねた。
「もう、びっくりしたじゃない」
「仕方ないだろう。エーフィが可愛かったからつい、ね」
「そういうところ、本当にシゲル君と似ているわよね」
「君だって、スキンシップに弱いところはコノハさんとそっくりだけどな。まあ、そういうところも可愛いけど」
私は体が少し熱くなるのを感じた。どうやら甘い囁きに弱いところも、コノハちゃんに似たのかもしれないわね。ポケモンはトレーナーに似るっていうし。
「ちなみに、嫉妬深いところもご主人様に似た」
「それ自分で言ったらダメでしょ」
思わずつっこんでしまったけれど、嫉妬って……。またそういうワードを恥ずかしげもなく言っちゃうんだから。あ、こういうところもシゲル君とそっくりね。
「でも、どうしていきなり……嫉妬なんて言葉が出てくるの?」
「………………」
「……ブラッキー?」
綺麗な赤い瞳を細めてプイッとそっぽを向くブラッキー。ど、どうしたのかしら……。私、何かした記憶はないのだけれど。
「別に嫉妬というか……。エーフィ、君、最近変なのに付き纏われているだろう?」
「変なの?…………あ」
そういえば、この前近くの森で野生のグラエナと遭遇したっけ。三匹くらいいた気がする。
森の調査に赴いたシゲル君達に着いていっていきなり襲われたのよね。
でもご心配なく。なんたってマスターランクの探偵のポケモンですから、無様な姿は見せずにきっちりと倒してあげました。
私達ポケモンもしっかりしないと、せっかく頑張ってきたコノハちゃんの努力が全て無駄になっちゃうもの。
で、まあそのグラエナ達がですね、最近ヤケに私の前に現れるようになってきたの。しかも面白くもない自慢話なんてしてくるものだから本当に困っていて……。
「あのグラエナ共、絶対君に気がある」
「そうなの?」
「……自分に向けらている好意に疎いところもコノハさんに似たよね」
ブラッキーが溜息を吐くものだから、私は少しムッと顔を歪ませた。コノハちゃん程鈍感じゃないわよ。
心の中で文句を言っていると、すぐ側にある叢がガサリと音を立てた。
「何だ!」
私とブラッキーは臨戦態勢に入る。私達の穏やかな時間を邪魔する人には容赦しないわ!
ジッ……と叢を睨み続けていると、その叢から灰色の塊が姿を現した。
「……あ」
「………………」
それは丁度今話題に上がっていたグラエナ達だった。また来たの……?もう自慢話にはうんざりなのだけど。
お願いだから帰って。という私達の帰れオーラに気づかないグラエナ達は、満面の笑みで私の所へと駆け寄ってきた。
「よっ!エーフィ」
「よければこれから一緒に散歩でもどうだ?」
「この近くに美味しい木の実があるんだ。一緒に食おうぜ〜」
今日は自慢話ではないようだけど、呑気に食事のお誘いをしてくるグラエナ達。けれど私はそっぽを向いて一つ一つ丁寧に返事をしていく。
「こんにちは、グラエナの皆さん。生憎だけど、今はお散歩したい気分ではないの。あと、木の実ならこの前私達のトレーナーと採りに行ったので結構です」
「まあ、そう言うなって!」
「そうそう、そんな冴えない奴と一緒にいないでさ〜」
その言葉に私は久しぶりにカチンときた。冴えない奴とは確実にブラッキーのことだ。
私にとったら貴方達の方が冴えない奴よ!同じあくタイプでもこんなに違うものなのね……。
頭にきた私は一言何か言ってやろうと一歩前に出ようとした。けれど、私が動く前にブラッキーが先に一歩前へ出た。
「君達、エーフィが嫌がっているのに気づかないのか?俺からすれば、君らの方がよっぽど冴えない奴に見えるけれど」
「何だと!」
「エーフィにナンパしている暇があったら、少しはその空っぽな頭に知識の一つや二つ入れてくるんだね」
ブラッキーの挑発にグラエナ達にブチッと怒りマークがついたのが分かる。
……というかブラッキー、その挑発的なところもシゲル君そっくりね。
「いいじゃねーか、やってやろうぜ兄弟」
「勝負だ!勝負!」
「これで俺達が勝ったらお前エーフィと別れろよ」
「え!?勝手に決めつけっ」
「いいだろう」
「ブラッキー!?」
勝手なことを言うグラエナ達に意義を唱えようとすれば、彼らの提案にブラッキーは躊躇うことなく乗ってしまった。
「ねえ、ブラッキー。あんなの相手にしなくていいから放っておきましょう」
「大丈夫さ。それにそろそろ俺もうんざりしてたんだよ。いい機会じゃないか」
「……なんていうか、ものすごく不安なんだけど」
別にブラッキーが負けるなんて思っていない。寧ろブラッキーのその変にやる気なところが心配なのよ。
「よしっ、じゃあ始めるか」
「「おう!」」
「って、ちょっと待って!まさか3対1で戦うつもり!?そんなの卑怯よ!」
「知らないね。勝てりゃあいいのさ勝てりゃ」
ゲラゲラと高笑いするグラエナ達。見てると段々イライラしてきたわ。こうなったら私も参戦しよう。そう思ってブラッキーの元へ足を動かそうとした。
「エーフィ、君は戦わなくていい」
「え、でも……」
「この程度の奴ら、俺ひとりで十分だ。だから任せてくれ」
という彼に私の胸はドキリと高鳴った。やっぱりブラッキー、カッコいい。そんなことを考えている場合ではないけれど、考えずにはいられなかった。
その後、グラエナ達はブラッキーにコテンパンにやっつけられたのでした。ちなみにブラッキーは無傷。まあ予想はしていた通り本当に酷い有様なのだけれど、ここまで想定内だと逆に自分が怖いわ。きっとコノハちゃんといる内に私も勘の鋭さが身についたのかもしれないわね。
目をグルグルと回しながら倒れているグラエナ達を見て大きく溜息を吐いた。
勿論、帰ってきたコノハちゃんとシゲル君は、そのグラエナ達を見て驚いた様子だった。
『……何これ』
「もしかして、ブラッキー達が?」
「ブラ(そうだ)」
「フィ……(はぁ……)」
私の尻尾に自分の尻尾を絡ませて、ベッタリとくっつき離れないブラッキーは、当然のようにシゲル君の問に大きく頷く。でもシゲル君、私はやっていないのよ。ブラッキーだけだから。そんな意味を込めてまたまた溜息を吐く。
「……ああ、なるほどね」
『え。何が?』
シゲル君は私達の様子を見て色々と察した様だった。流石ブラッキーのトレーナーだわ。……コノハちゃんはわかっていないようだけど。鈍感だから。でもコノハちゃんらしいわ。
「ブラッキーはちゃんと好きな子を守ってるんだね。流石僕のポケモンだ」
「ブラッキ!」
トレーナーであるシゲル君に褒められて嬉しいみたい。シゲル君に忠実なブラッキーも素敵だなあ。
『結局何がどうなってるのよ……』
面白くなさそうな顔をするコノハちゃんにシゲル君は苦笑いを浮かべた。シゲル君がコノハちゃんとくっつくのはいつになるのやら。
コノハちゃんがシゲル君への自分の気持ちに気づいていないだけで、この二人とっくに両想いなのだけれど、後はもう時間の問題かしら。
シゲル君にいじられて頬を染めるコノハちゃんを見ながら、未だにくっついているブラッキーに体を預けた。