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□10話
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10 静雄視点

季節は12月、俺は窮地に立たされていた。

「あぁクソ無理だー!」

期末試験まであと3日。何一つ勉強していない。

放課後、集中したいから図書室でとりあえず不得意な数学から始めてみたが時間ばかりが過ぎていくだけで一向に進まないというか分かんねえ。
暗号にしか見えねえ。

・・・駄目だ赤点だな、数学。

俺が丁度諦めていた時だった。

「やぁ静雄じゃないか。何してるんだい?」

背後から新羅に声をかけられ振り返れば案の定、本を片手に持った新羅の姿があった。

しめた。

「頼む新羅。助けてくれ。」

「口を開くなりSOSって何なのさ。
で、どうしたの?」

「この問題分かんねえ。」

そう言って俺は悩みまくっていた問題を指差した。

「んー....これは....公式から違うなー」

「.....まじか」

「うん。これじゃあ解けないよ問題。この公式使わないと」

新羅が指差してた公式で解いてみたらなんてことはなく解決してしまったので、ありがとうとお礼を言おうとした所、新羅の姿がない事に気付く。

…阿保すぎる俺が嫌になったのか。

少し虚しくなったが、この感情を吐露する相手もいないので俺は再び一人で暗号と戦う事にした。

それから程なくして肩をトントンと叩かれる。

新羅かと思い振り返るとそこには薄笑いを浮かべたノミ蟲が居て、何でも新羅に俺が図書館で勉強してる事を聞いて来たらしい。

そして俺が公式を間違って書いた問題を見せろとしつこくせがまれ、俺は驚きと同時に早速キレそうになった。

ノミ蟲は俺を馬鹿にするだけ馬鹿にして帰るんだろうなーと思っていたが意外にも分かんねえ事は丁寧に教えてくれた。

後、俺の未提出物がどの教科でどれくらい溜まっている事も何故か知っていた。意味分かんねえ。


結局それからノミ蟲は俺に1時間ぐらい付き添ってくれた。

未提出物課題も奴の助言のおかげで半分片付いたと言ってもいい。

奴に礼を言おうか言うまいか多少迷ったがまあ何だノミ蟲に気を使ってるのも可笑しいと思ったので礼は言わなかった。

もう大分図書館から人も居なくなってきたと思ってたら下校チャイムが鳴り始める。
時計を見れば午後6時だ。

教科書、ノートを鞄に突っ込み帰る支度をする。
ノミ蟲は帰る準備が出来たのかふあーと欠伸をしている。

「シズちゃん。」

「何だ?」

「今日家泊まりなよ。」

「・・・・・・・・・・は?」

一瞬頭がフリーズ仕掛けた。
何を突然言ってるんだノミ蟲は

俺が?マークを浮かべてると、奴はノート回収の話をし始める。

俺のノートは所々書いてない部分が多いから回収しても成績に加味されないだろうと。

だったらノミ蟲のノートを奴の家で俺が書き写して更に未提出課題はノミ蟲に聞きながらやれば効率が良いだろうと言われた。

確かに効率は良いが奴が自分にメリットがない提案をしてくるのは不自然で仕方ない。

「心配しなくても何も裏なんてないよ。すべて俺の温情さ。有難く受け取るんだね。」

奴の言葉に再びイラっとはきたものの俺はノミ蟲と一緒に帰る事になった。


「・・・・。」

「どうしたの?シズちゃん」

「いや・・・アパートじゃねーんだなと思って」

「当たり前だろ」

いや俺はアパートなんだがな。という言葉を飲み込んで俺は奴の家に上がった。


「・・・・・・。」

「唖然としてるねシズちゃん。」


認めたくはないが、ノミ蟲の言う通り唖然としてしまった。
何せ俺の家はデカイ液晶テレビもソファーもねえし高層マンションでもねえんだから。


「シズちゃん、先にお風呂入ってきて。バスタオルは風呂場にあるから」

「俺が先でいいのかよ」

「良くないけど俺の残り湯でシズちゃんが欲情なんてしたら嫌だからね。先入って」

「誰がてめえに欲情するか。」

「俺とクリームで変な妄想したのは何処の誰だろうね?」

「・・・。てめえはまだ引きずってんのかよ」

「引きずるよ。ショックだったんだから。兎に角、風呂入ってきて。」

問答無用だとノミ蟲に風呂場に連れて行かれた俺は渋々先に風呂に入る事にした。

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