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□12話
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12 静雄視点
2月14日。バレンタインデー。
教室中、本命チョコだの友チョコだの義理チョコだのとほざいてて朝から随分騒がしかった。
まあ、チョコを貰わない俺には全く関係ねえ話だ。
コン。
「ん?」
今なんか頭に当たったな確実に。
「シズちゃん、ハッピーバレンタイン」
背後から臨也の声が聞こえて振り返るとチロルチョコの詰まったチョコレートとやたらでかい袋を持って立っている。
そして床に視線を移すと俺の机付近にチロルチョコが一つ転がっていた。
「なんだてめえか。つかチョコ投げんな」
「いいだろ別に。チョコを貰いたくても貰えないシズちゃんを思っての事だよ」
「狙ったように人の頭に当てやがった癖してよく言うぜ」
俺がそう吐き捨てると奴は「もう一個あげよっか?」と揶揄ってきたので「要らねえよ」と一言言ってやった。
馬鹿にしやがって。
その後、でかい袋の事を奴に聞いたら「全部チョコだよ」と得意げに答えるもんだから更にイライラした。
後に新羅もやって来て、チロルチョコの詰まった袋を貰い、バレンタインの由来の話を長々とされた。
由来によるとローマ皇帝のなんとかって奴がバレンタインって奴を処刑したって話でチョコとは何の関係性もないって話らしい。
新羅的には俺へのフォローなのかもしれないが、生憎俺はどーでも良かったし途中から熱く語り出す新羅を見る方がよっぽど辛かった。
放課後、授業が終わって掃除がない俺はさっさと帰る為、下駄箱に直行して驚いた。
2つチョコが入ってた。
俺はその場で見るのが恥ずかしくなってチョコを乱暴に鞄の中に詰めると突風の如く家へ帰って開けた。
一つはゴディバのトリュフチョコだった。
先月のプリンといい今回のチョコといい何だって高い物が最近贈られてくるのは不思議だ。
というかプリン置いていった奴と同一人物か?
そこまで考えてまさかなと思い、二つ目のチョコを開けた。
もう一つは手作りのトリュフが入ってて「傘ありがとう」と書かれたカードも一緒に入ってた。
嬉しかった。
礼なんてされると思ってなかった。ましてやチョコを貰えるとも思ってなかった。
俺はトリュフを口の中に入れた。
ほんのりと甘い味がして俺はふっと笑った。