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□14話
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14 臨也視点。
「花見?」
春休みも残り僅かとなった4月上旬の事だった。
突然新羅から花見に行かないかと誘われた。
「メンバーは?」
「俺と門田君と君で3人だよ」
「・・・。シズちゃんは?」
「彼も誘ったんだけど断られちゃったんだ。」
「じゃあ行くよ。」
「本当かい?」
「うん。だってシズちゃんいないんでしょ?行くに決まってるよ」
「意地っ張りだなー。寂しいくせに」
電話口でハハハと笑われ反射的にガチャっと電話を切った。
その数秒後に新羅から電話がかかってきて平謝りされた後、結局明後日に花見に行くことが決定した。
そして当日
気候にも恵まれた晴天の下、満開の桜が其処かしこに咲いている。
人気もなくついでに新羅が作ってきた弁当も上手い。
まあそこまではいい。
「何でシズちゃんがいるのさ」
しかも真正面に。用事があるとか行って来れないんじゃなかったっけ?
「てめえが来れねえって新羅から聞いたんだが?」
想定外のシズちゃんからの返答に俺はバッと新羅の方を振り返るとニコニコと気色悪い笑みを浮かべてる。
成る程、俺は新羅にいとも容易く騙されてしまったらしい。
即、帰りたい欲求に駆られたがシズちゃんの前で逃げるような真似は俺の高いプライドが傷つくので出来る筈もない。
糞新羅、覚えてろ。
俺は重箱に入った色とりどりの料理を突きながらキッと新羅を睨みつけた。
それから1時間後。
予想通りシズちゃんと口論になり、花見どころではなくなると思ったのか新羅が持参してきた酒でも飲もうかと言い始めた。
「全員未成年だろーが」というドタちんのツッコミもあったけど、俺もシズちゃんもイライラしてたのか新羅に便乗して飲もうって話になった。
最初は普通に飲んでたけど、お互い飲み比べをし始めた。
梅酒にビール、日本酒、ウイスキー。
シズちゃんは梅酒しか飲んでなかった。まあ、子供舌だからね。
かなり飲んだのかまともに口論する余裕も無くなった。
心なしか頭もぼーっとしてる。
ドタちんは腹が痛いと言って席を立ったきり帰ってこないし、新羅も何故かいない。
早く帰ってきてくれないかなー。
シズちゃんと二人きりで花見とか本当御免だよ。
シズちゃんの方に目を移すと真っ赤な顔をして、未だに梅酒瓶を片手に飲んでいる。
「シズちゃん、もうやめなって」
「.....おれはなぁ.....まえねえ」
・・・。駄目だ呂律が回ってない。
「シズちゃんが勝者で敗者は俺です。もういいだろ?酒置きなって」
「・・おれは・・のめう」
「ゆでダコみたいな顔して何言ってんのさ。いいからそれ貸して」
見かねた俺はシズちゃんの手から酒瓶を取り上げようとするが「これはおれのだ!」と言って譲ろうとしない。
その結果
ブシャア。
力尽くで酒を取ったがシズちゃんに押され態勢を崩し、顔面と体に酒を思いっきりかけてしまった。
おかげで酒瓶の中は空になったが、服が濡れて肌に張り付いていて気持ち悪い。
着替えなんて持ってきてない。
最悪だ。
俺がシズちゃんに文句を言おうとしたところで彼にガッと腕を掴まれ、
そのまま強引にビニールシートの上に押し倒される。
「何…してんの?」
突然のシズちゃんの行動に頭がついていけない。
「...分かんねえ」
「分かんないって」
何だよと言おうとした所で唇を塞がれる。羞恥で顔が赤くなり、両腕をしっかり押さえつけられてる為、抵抗らしい抵抗も出来ない。
何でシズちゃんが?
酔うとキス魔にでもなるのか?
意味が分からない。
このまま流されたいと思ってる自分も理解不能な行動を取るシズちゃんも。
「舌....入れて?」
唇を触れ合わせるだけのキスは飽きていた。抵抗も出来ずに動けない。だから、少し本音を晒した。相手だって意識はないのだから、まともに聞くはずもないと思って。
だが、ゴクっと唾を飲み込む音がして、俺が撤回しようとした口内に舌が侵入する。
「んっ....はぁ.....」
こんな風になるつもりはなかったのに。
でももうどうしようも出来ない。
流されたい。
理性はとうの昔に消え去り、脳は快楽を貪欲に欲しがっている。
俺はその快楽を甘受しながらゆっくりと瞼を閉じようとした時だった。
ブシャアと何か液体が溢れる音が聞こえる。
振り返れば、門田が棒立ちになってて地面には空の紙コップが二つ転がっている。
その側には新羅もいて、「もう何やってんのさ!」という声も聞こえてくる。
.......。見られた
サァっと血の気が引いたのと同時に理性が戻ってきて俺は酔っているシズちゃんを力の限り蹴り飛ばした。
「…あー...とりあえず...お楽しみ中邪魔して悪かった」
「違うから!」
頼むから申し訳ないとばかりに謝んないでよドタちん。
ちらっと横を見ると蹴り飛ばした酔い潰れ直前のシズちゃんがスースー寝ている。
「.....。もう帰る」
萎えた。
「えー臨也帰るのかい?さっきまであんなに善がってたっていうのグホォオ!!」
新羅の馬鹿が余計な事を言うので、一発キメると俺はその場を後にした。