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□15話
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15 静雄視点。
奴が酒瓶を置いたら俺もやめる。
そう思っていたのに結局自制が出来なくなる程、酩酊してしまった。
にも関わらず、酩酊した後自分がノミ蟲にあれこれやった事が記憶に残ってしまった。最悪だ。
今回は完全に俺に非があるから、新羅を通して電話越しに謝ろうとしたが、俺が言葉を発した瞬間切られてしまった。
・・・。まあこうなる事になると予測していたが、実際やられると腹が立つもんだ。
記憶から抹消したいが残ってしまった以上出来る筈もない。
ますます俺とノミ蟲の間に亀裂が入ってしまった。
いや別に仲良くしてえ訳じゃねーんだが。
4月、奴にどんな顔して会えばいいんだ。
もう奴の前で一生酒は飲まねえ。
俺はそう心に誓ったが、結局憂鬱な気分が晴れぬまま春休みが過ぎていった。
そして迎えた新学期。
クラス分けの用紙で俺は去年と同じく1組だった。
「おはよう静雄。また一緒だな」
既に席に着席していた門田に声を掛けられる。
「よお」
俺は門田に挨拶をする。
周囲を見回したが、もう始業のベルが鳴るっていうのにノミ蟲の姿が見当たんねえ。
「ノミ蟲は休みか?」
「臨也?別クラスだぞ」
「・・・・・・え?」
「クラス分けに新羅と臨也は2組だって書いてあったぞ。見てこなかったたのか?」
「・・・・・。マジか」
・・・。奴と別クラス。
そうか今年は毎日のように顔を見なくていいんだな。
口論も喧嘩も無くなる。
こんな嬉しい事はないというのに何処かもやもやした気分になるのは不思議で仕方なかった。
とその時だ。
「・・・。平和島君?」
横から聞き覚えのある声がして振り返る。
以前傘の礼だからと手作りのチョコを渡してくれた女子生徒だ。
まさか同学年で今年一緒のクラスになれるとは思わなかった。
「チョコ美味かった」
俺は気の利いた事は言えねえし思いつかないから、一言素っ気なくチョコのお礼を言えば、「こちらこそ」と微笑みながら答えてくれた。
スッと心が穏やかになる。
ノミ蟲とは正反対だ。
始業のチャイムが鳴り、慌てて俺の隣の席に座るそいつを見て何だか微笑ましくなった。