MAIN 2
□☆☆☆☆モブ男は見た!よん!
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・・・皆さん、こんにちは。そろそろ名前を覚えてくれているでしょうか?あっ覚えてないか。のりやです。
俺は今日久しぶりに住宅地で喧嘩をしている平和島と折原を目撃しました。
目にも留まらぬ速さの抗争が繰り広げられていますが、俺は寿司屋とか、コンビニとかディズニーの一件を見てきているのでとても違和感しか感じません。
何の為にあの二人は戦っているんでしょうか。俺にはさっぱりです。バカップルなのに。
とその時。
遥か上、ビルを飛び越え人間離れした喧嘩を見せていた二人の視線がある一点を見ている事に気付いた。
嫌な汗が背中を伝う。
えっなにどうした?怖い怖い怖い。凄く怖い。何で二人とも止まってこっち見てんの。こっちにそんな珍しい物ないよ!一般人しか居ないよ!喧嘩再開でも何でもいいからこっち見てんじゃねーよ。
だが、俺の心の叫びとは反対に二人は顔を見合わせると迷いなく地上に降りてくる。
俺は全速疾走した。まさかあの二人に追いかけられる日々が来るとは夢にも思ってなかったというか死んでも嫌なのだが、走るしかない。走れ俺!友人の処刑をさせまいと走ったメロスの様に走るんだ!
「おい」
・・・・。だが俺はいとも容易く平和島に首根っこを掴まれ、後からやってきた折原と共に暗い路地裏に連れ込まれた。
ああ…俺の人生終わったわ。
「のりや君だっけ?単刀直入に聞くけど、俺に好意を抱いてたりする?」
いやいやいや。違います誤解です。というか何でそうなった?
折原の質問に俺は首を左右に何度も振った。
「あ?てめえ本当だろうな?嘘ついてたら容赦しねえぞ」
ひええええ。こっわい。めっちゃがんつけてくる。しにたくないです。
強者には人間本能的に従いたくなるものです。意気地無しの俺は、偶然とも言えぬ確率で見てきてしまった事を赤裸々に話すと、横で折原が腹を抱えて笑いだす。
「ほらぁ。シズちゃんの被害妄想じゃん。ばっかばかしい。」
「うるせえ。コイツがまじまじと見てくるから勘違いしたんだ。」
「大体、俺の事性的な目で見てくるのなんてシズちゃんぐらいだろ?後、セクハラも。」
まあ、俺はそういうシズちゃんだからこそ好きなんだけどね。
そう言って目を細めて折原が柔和な笑みを見せる。途端に顔面が赤くなった平和島は折原を強引に引き寄せると、額にチュッチュッとキスを落とす。
あー・・・俺、邪魔だな。
1、2歩後退しそのまま足音を立てずに立ち去るつもりだったのだが....。
「待って。」
背後から折原に呼びかけられ、俺はぴたりと一時停止する。
「あまりこの事、口外しないで欲しい。それだけ。.....ちょッあっシズちゃ....」
「他の奴に話を振るとはいい度胸だな?」
「だって....大事な....事....やぁ」
「てめえは俺だけに集中してればいいんだよ。」
「何時も...シズちゃんしか...あん...見てぇない♡」
「俺もだ臨也」
「はぁん...シズちゃん好きぃ♡」
・・・・。帰るんだ。帰ろう。
何やら砂糖を吐くレベルの告白タイムも始まるようだ。
ノンケには辛い。いざマイホームへ。
俺は今度こそその場を立ち去った。
結局、何故二人が喧嘩をしているのか理由は分からない。でも口外をするなとの警告を受けたからそれを考慮すると喧嘩は本当の二人の関係をカモフラージュする為の演技か何かだろう。
これはあくまで推測だから何とも言えないけど事実だとしたら随分大掛かりで人迷惑な話に違いない。
「ぎゃああああ」
後に何故か折原に個人情報を奪われた俺は、否定する間もなくいつの間にか痴話喧嘩の相談相手になるという何とも残念な未来が訪れるのだが、それはまた別の話である。
おしまい( ^ω^ )