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□4話
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04 臨也視点
翌日、俺はシズちゃんを呼び出した。
新羅に頼んだ方が効率も良いのではないかと思ったがやはり自分にとって大切な存在だった事もあり、放課後掃除の行き届いた教室に彼を呼び出した。
臨也はすぅっと息を吸うと
「久しぶりだね。シズちゃん。ずっと俺」
『会いたかった』
そう言っては静雄に向かって柔らかく微笑んだ。
すると静雄は少し難しい顔をして暫く黙り込み、首を傾げてこう言った。
「......。誰だ?」
呆然自失となるとはこういう事なんだなと俺は思った。
だって一瞬本当に頭が真っ白になったんだから。
「折原 臨也だってば。聞いた事あるでしょ?」
「初めて聞いた。」
「・・・・。君、小学校の時誘拐されそうになってた俺を助けてくれただろ?」
「・・・誘拐?」
「うん。それで俺が友達になろうって言って週一に君と公園で話しただろ?あと時々だけど君の家にも俺遊びに行ったんだけど」
「・・・・。」
「俺と友達になれて良かったって。俺の事好きだって何度も言ったくせに君、何も言わずに俺の前から姿を消したんだけど。なんか理由あったんでしょ?」
「・・・・。そんなの分かるわけねえだろ」
「何でさ?」
「・・・・その・・・わりいけどお前の事・・・・」
『全く覚えてねえんだ』
・・・・・・。酷いなシズちゃん。
勝手に居なくなった時も酷いと思ったけど今の方がずっと酷い。
心臓が痛い。
何で俺の事は何も覚えてないのさ。俺は1日でも君の事忘れた事なんてなかったのに。
俺は様々な人間を見てきたけど君程魅力的な人間は見た事なかった。だからずっと会いたかったのに
でも残念だ。君にとって俺は所詮すれ違う通行人同様だったんだろうね。
どうでも良かったんだろ俺なんて
だから覚えていないんだろシズちゃん・・・。
「なあ人違いって事はねえか?」
その言葉に俺は目を丸くするとアハハハと彼を馬鹿にしたように笑った。それが伝わったのかシズちゃんの目つきが若干冷ややかになる。だがもう知った事ではない。
もう我慢の限界だ。
「それはないよ。だって君は短気で暴力的でその暴力的な力を自己コントロール出来ないのさ。だから皆君の前から消えていく。そして嫌でも君は孤独を強いられるんだよ」
「やめろてめえ」
「でも俺は君よりも君のご家族が本当に可哀想だと思うよ。毎回暴力事件起こして学校や近所に頭下げてさ。俺なんて絶対ごめんだよ。そんな子供。」
「やめろっつってんだろ!てめえ!!」
青筋を浮かべて語気を荒くする彼を
俺は嘲弄する。
「なぁに別に俺は君がキレたって構わないよ。でもシズちゃん、俺にムカつく言葉の一つや二つ言われたからってすぐキレるのは良くないよ。社会に出て上司に嫌味言われたら君はすぐキレるのかい?そうしたら君は会社クビになっちゃうだろ?協調性と上下関係がなってない奴は生きていけないよ。俺を見習って少しは勉強したら?そうすれば君の頭の体操にもなって記憶だって戻ると思うよ」
「やめろって言ってんだろうが!!!!」
静雄はそう言うと傍にあった机を片手で持ち上げ臨也に向かって放り投げる。それを臨也はなんなく避けると所持していたナイフで静雄の胸元を切り裂いた。
「!?」
避けるとは思っていなかったのかそれとも自分を切りつけてくるとは思わんなかったのか非常に驚いた表情を見せるが一瞬にして怒りに変わったのか臨也を睨みつける。
「・・・ハハっ。血の一滴も出ないなんて。流石化け物。人間じゃない」
「!!黙れ!!クソノミ蟲が!!」
「おっと」
静雄は傍にあった机を片手で持ち上げたか思うと臨也目掛けて投げつける。そして静雄は付近にある机や椅子を全て臨也に投げつけ、教室は散々な事になった。
「てめえに俺の何が分かる。何でも分かったような風な事言いやがって!!ふざけんな!!!ぶっ殺す!!」
そう言って椅子をドア付近にいる臨也目掛けて投げつける。勿論臨也は余裕で交わしてしまうのだが
とその時ガラガラガラと教室のドアを開ける音が聞こえた。
「ちょっと騒がしいよ〜ってうわあ!」
咄嗟に伏せた新羅の上を臨也を狙って投げたイスが宙を舞ってそのまま廊下の窓ガラスに激突した。
窓ガラスは当然砕け、イスは地面に急降下していった。
新羅はゆっくりと立ち上がるとイスの落ちていった方向を見る。幸い下に人は居なかったようで怪我人もいない。
ほっと胸を撫で下ろし大体想像は付くが主犯の顔を確認する為、顔を見ればそこには怒り狂った静雄の姿と何故か臨也の姿があった。
「わりい新羅。怪我しなかったか?」
「いや大丈夫だよ。でもあと少し遅かったら顔面崩壊してたと思う。びっくりした」
「本当すまねえ」
「うん。いいよ慣れてるから。ところで何でこんな事になったの?臨也君喧嘩なんてした事ないのに何でいるんだい?」
「シズちゃんが最低最悪でキレて俺に暴力振るってきたから。1ミリも俺は悪くないのに」
「は?悪くねえだと。てめえ俺にナイフ突きつけてきてよく言うよな」
「それは防御の為だよ。」
「嘘つけ!!明らかにてめえが俺に向かって来たんだろーがー!!」
「君の被害妄想だろ。まあ現にそれだとしても君は化け物で血の一滴も出なかったんだ。何か損でもするわけ?」
「てめえクソ「ちょっと待った。事情はよく分かんないし俺が切り出しといて悪いけどもうやめよう。埒があかない。とりあえず机と椅子が無事なのか確認して元に戻した方がいいと思う。」
「正論だ。こんな奴と言い争っても本当無意味だね。教室直すよ。」
「俺も同感だ。俺も教室直すが落ちた椅子が無事かどうか確認してくる。」
「ハハッ。窓ガラス突き破って3階から落ちた椅子が無事なわけないじゃん。シズちゃん馬鹿なの?」
「あ?なんか言ったかてめえ聞こえねえな」
「二人共、ストップ!本当に終わらなくなっちゃうだろ。静雄は一応椅子壊れててもいいから運んで来てくれ。それで臨也は僕と一緒に教室直そう。それでいいだろ」
「手伝わして悪い。すぐ運んでくる」
「戻って来なくていいよ永遠に」
そう臨也が言うが彼は一瞬振り返って睨みつけると教室を後にした
「ありがとう新羅。巻き込んじゃってごめん。」
「巻き込んでくるのはいつもだろ。それでどうしたんだい?」
「・・・・・・・。なんでもない」
「隠すなよ。言いたくないの?静雄に何かされた?」
「・・・・・・別に。ただこうなったのは冷静じゃなかった俺が悪いのかなって思ってるよ。さっき1ミリも悪くないって言ったけど」
「謝るのかい?」
「検討中」
「何で?」
「すっごいイライラする。」
「…。まあ時間を置いてゆっくり解決していくってのもありだと思うよ」
「うん.....でも個人的に長引くのは嫌だから明日話そうと思ってる。」
「また喧嘩するなよ?」
「大丈夫。一晩寝ればお互い頭も冷えるだろうし」
「心配だな〜。まあ僕は上手くいくよう健闘を祈るよ」
そう新羅が言えば俺はハハッと力なく笑った。