それは必然で。

□ぜろ。
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…だるい。
朝から俺はそんなコトを考えてた。
それもそのはず、まだ俺はガムを噛んでいないのだ。お菓子もねーし…。
「あー…」
俺はジトーとマネージャーであるナツミを睨む。あいつにガムをとられたのだ。
そんな視線に気付いたのかナツミがこっちを見た。
ナツミは小さな舌をちょっと出して笑う。

…はい、アウト。

俺はナツミの方へ駆け出した。そして飛びかかる。
わざとらしい悲鳴をあげてナツミは逃げた。
それを幸村君に見つかって怒られて。

まあ、いつも通り。これが俺の日常だった。
ナツミも練習が終わればガムを返してくれる。ついでにチロルチョコ付きで。
俺はこんな日々が好きだった。

ナツミは女子の中でも小柄な方だと思う。多分、150cmないんじゃねーのかな。
けど、小柄な体に似合わずとても勝気だ。いや、小柄だから勝気なのか…?
どんな奴でも気にせずに話す。コミュ力がすげえんだ。
テニス部でもレギュラーはもちろん、その他の部員にも対等に接している。仕事もちゃんとやってるし。
そこは、尊敬する。そこだけだけど。

転けそうになりながら部員達のドリンクを運ぶナツミ。相変わらずの馬鹿力。カゴの中にたくさん入れて運んでいる。
他のマネージャーよりも運んでいる量が多い気がした。
「ナツミ先輩!手伝うッス!」
俺ら立海のエース、赤也がナツミの持ってるカゴをヒョイっと持つ。
「サンキュー、赤也」
ニッとナツミは笑った。赤也も嬉しそうに目を細める。
「けど、全部は悪いからちょっと持たせて」
ナツミはそう言うとカゴの中から何本かボトルを取って持つ。
「面白くなさそうじゃの」
後ろから声が聞こえる。振り向くと仁王がいた。
「んなコトねーよぃ」
俺がそう言うと仁王は意味ありげに笑いドリンクを取りに行った。俺もドリンクを貰いにナツミの元へ行く。
「ほい、お疲れ様」
屈託のない笑顔を浮かべながらナツミは次々にボトルを手渡す。俺もナツミから貰おうとしたが別なマネージャーから渡されてそれは叶わなかった。

朝練も終わり俺はナツミの元へ行く。ガムを返してもらうのだ。
倉庫の中に入っていくナツミを見つけ追いかけようとしたが倉庫の中を見て俺は足を止めた。
…赤也がいたのだ。
俺は咄嗟に隠れる。そっと中の様子を伺うと赤也が何か言いたげにナツミを見ていた。俺の場所からだとナツミの表情は見えない。だが、アイツのことだからアホ面でもしているだろう。
「俺、先輩と…」
微かに聞こえる赤也の声。いつもより上ずっている。
これはもしかしなくても告白?聞くのは悪いと思いながらもその場に隠れていた。
「丸井、何やってるの?」
突如、謎の声が聞こえて俺は叫んでしまった。
「うわぁぁ⁉︎」
そこには呆れ顔の幸村君がいた。俺の声に気付いて赤也とナツミが倉庫から出てきた。
「なに叫んでんだよー」
ケラケラと笑いながらナツミは俺を見る。ナツミの隣にいる赤也の顔は怖かった。
「いつから、いたんスか」
少し怒気を孕んだ声色に一瞬怯む。
「…ついさっきだよぃ」
赤也はジッと俺を見る。いたたまれなくなり俺は目を逸らした。
「あ、そだ。ほい、ガム」
場の空気に合わない能天気な声とともにガムとチロルチョコが投げ渡された。俺はキャッチしてナツミを見る。そこにはいつも通りの笑顔があった。
「赤也、さっきの話いいよー」
ナツミの言葉に赤也の顔がパッと明るくなる。
「あと適当にメールちょーだい」
それだけ言ってナツミは1人歩き出した。
「…どうゆうコト?」
幸村君は状況が飲み込めなかったらしく1人首をかしげていた。
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